デジタルアーカイブの作り方! 手順と利活用のポイント
デジタルアーカイブとは、官公庁・自治体・図書館・民間企業などが所有する公文書や歴史文書、文化財などの情報資産を保存・公開する仕組みのことです。デジタルアーカイブを構築することで、紙媒体で保存していた資料のデジタル画像やコンテンツなどを閲覧したり、印刷またはダウンロードしたりできます。
情報資産が有効活用されると、国民の文化的活動や大学・研究機関での研究活動、産業界における新事業の展開、自治体での地方創生など、あらゆる分野で新たな価値創出につながることが期待されます。
組織や企業の担当者のなかには「どのような手順で構築するのか」「利活用しやすくするポイントはあるのか」などの疑問を持つ方もいるのではないでしょうか。
この記事では、デジタルアーカイブの作り方とポイント、活用事例について紹介します。
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デジタルアーカイブの作り方
デジタルアーカイブの構築にあたっては、紙媒体で管理されていた資料や作品を電子的に保存・公開できる環境を整備する必要があります。ここでは、具体的な構築手順について解説します。
①対象の情報資産を設定する
1つ目は、対象となる情報資産の設定です。
デジタルアーカイブを構築する目的を踏まえたうえで、保存・蓄積・公開する情報資産を設定します。文書・写真・動画・音声・設備など、有形無形問わずにデータとして管理する情報資産を定める必要があります。
▼デジタルアーカイブ化の目的と対象となる情報資産の例
目的 |
情報資産 |
民間企業における技術・ノウハウの継承 |
製品の設計図書、社屋や行事などの写真資料、営業報告書、契約書 など |
博物館や美術館における文化資産の利活用促進 |
展示作品、博物資料、貴重書、地図 など |
行政機関による文書の適正な保管・管理 |
行政文書、特定歴史公文書 など |
②デジタル画像のデータを作成する
2つ目は、対象とする資料や作品などの情報資産をデジタル化することです。
紙媒体の資料や有形の収蔵品をデジタル化する際は、スキャナーまたはカメラを活用して、デジタルコンテンツに変換します。
文書や写真、動画などで劣化しているものがあれば、可能な限り修復してから、高品質なデジタルコンテンツを作成する必要があります。
また、デジタル化した情報資産を活用・共有しやすくなるように、以下のような機能やコンテンツを作成することも有効です。
▼情報資産をデジタル化する際のポイント
- 情報資産の発見を助けるサムネイルやプレビューを作成する
- カラーチャートを入れて、撮影時の色の状態を残す
- メールやSNSなどで共有しやすいようにデータ容量の小さいコンテンツを用意する
なお、資料のデジタル化についてはこちらの記事をご確認ください。
③メタデータを作成して、コンテンツを特定できる情報を付与する
3つ目は、メタデータの作成です。
資料を管理・検索するための情報となるメタデータを作成して、デジタル化した資料や作品を紐づけることで、情報資産を一元管理できるようになり検索性を高められます。
メタデータは分野によって対象項目や記述の仕方が異なりますが、情報共有・公開を目的としたデジタルアーカイブでは、シンプルで一貫した内容で記述することがポイントです。
▼メタデータの情報(一例)
項目例 |
詳細例 |
タイトル(ラベル) |
内容を端的に表したタイトル |
コンテンツの作者(制作人物) |
著者、撮影者など |
日付(時代) |
出版日、撮影日、作成時期など |
場所 |
都道府県、市町村など |
管理番号 |
識別するための番号 |
コンテンツの権利情報 |
運用者や利用者がどのような条件で利用できるかの情報 |
二次利用の条件 |
編集の可否、二次配布の可否など |
④閲覧環境を構築する
デジタルアーカイブの閲覧環境を構築する方法には、独自での開発または既存のプラットフォームを利用する方法があります。データの共有方法や各分野との連携などを踏まえて、システム開発または選定を行うことが重要です。
デジタルコンテンツをほかの機関と共有したり、一般に公開したりする場合には、ユーザーが検索しやすいようにデータベース形式で提供することが望まれます。
また、組織外の分野や地域などの横断的な利用を視野に入れている場合は、サーバ間のやりとりができるインターフェースが必要です。
デジタルアーカイブを利活用するポイント
デジタルアーカイブの利活用を進めるには、コンテンツの利用条件やデータ形式などを考慮する必要があります。
①コンテンツの利用条件を付与する
デジタルアーカイブで情報資産を公開・発信する際は、コンテンツの利用条件を付与することが重要です。
情報資産をデジタルアーカイブ化すると、保有しているコンテンツの幅広い活用が期待されます。ただし、著作権が設けられている場合もあるため、権利情報を確認したうえで、第三者による二次利用も含めて利用条件を付与することが重要です。
▼コンテンツの利用条件を付与するポイント
- コンテンツの種別やテーマ、品質などに応じて公開ポリシーを定める
- 二次利用の際に出典や所蔵館の表記を依頼する旨を記載する
- 著作権の保護対象や、保護期間満了について明示する
②公開用画像ファイルと保存用画像ファイルを分ける
デジタルコンテンツを発信する際は、公開用画像ファイルと保存用画像ファイルを分けることもポイントの一つです。
1つのファイル容量が大きい場合、画像表示に時間がかかる場合があります。公開用の画像ファイルでは、閲覧の利便性を高めるために圧縮率の高いJPEGやPDF形式にすることが有効です。保存用の画像ファイルについては、画像品質が保たれているTIFF形式がおすすめです。
デジタルアーカイブの活用事例
ここからは、民間企業と公共の図書館においてデジタルアーカイブを構築した事例を紹介します。
東京上海日動火災保険株式会社さまの事例|企業アーカイブを作成
東京海上日動火災保険株式会社さまでは、経営企画部図書室で企業史料と社内報に関する文書・写真などを収集・保管するデジタルアーカイブを構築しています。
創業当時からの営業報告書や取締役会議事録、社内報などの資料を収集して、円滑に利用できる環境を整えています。データベースを整えたことにより、社外の関連機関に対するスピーディーな資料提供や、データの二次加工による資料作成ができるようになっています。
あるき野市中央図書館さまの事例|歴史資料を一般公開
あきる野市では、情報拠点となる中央図書館において、市に関する“歴史・ひと・情報”を収集・保存して、デジタルアーカイブによって一般公開しています。
世代を超えて地域情報を伝えることをコンセプトに、貴重な歴史資料や市にゆかりのある人々の写真(画像)、深沢家文書のデータベース、あきる野市の新聞などの情報が集約されています。
検索画面では、年代やフリーワードなどの複数の選択肢から情報を絞り込めるようになっており、利用者が誰でも簡単に目的の史料にたどり着けるように工夫されています。
まとめ
この記事では、デジタルアーカイブの作り方について以下の内容を解説しました。
- デジタルアーカイブの作り方
- デジタルアーカイブを利活用するポイント
- デジタルアーカイブの活用事例
デジタルアーカイブを構築すると、企業や組織が保有するさまざまな情報資産を内部で共有したり、外部へと公開・発信したりできるようになります。構築する際は、対象となる情報資産の設定やデジタル化、メタデータの作成などが必要です。
また、デジタルアーカイブの利活用を促進するために、コンテンツの利用条件を付与することや、利活用に配慮した画像を提供することもポイントです。
『デジアカ』では、デジタルアーカイブ化を一気通貫で支援いたします。資料の現状把握から、対象物や目的に合った方法でのデジタル化、利活用の提案に至るまで、一括でのサポートを行います。
サービスに関する詳しい資料は、こちらからダウンロードしていただけます。
なお、デジタルアーカイブのメリット・デメリットについてはこちらの記事で詳しく解説しています。併せてご確認ください。