ストーリーのあるデジタルアーカイブ
たくさんのデジタルアーカイブが公開されていますが、そのストーリーの充実が知られるきっかけとなります。今回は、ストーリーについて考えてみました。
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地域のデジタルアーカイブがどんどん公開されている
自治体のデジタルアーカイブの構築・公開が増えているようです。昨年度末から今年度の6月中旬までに、国立国会図書館のカレントアウェアネスサイト(https://current.ndl.go.jp/) にてその公開を発表されたデジタルアーカイブは20件ありました。そして、その中で地域(自治体など)のデジタルアーカイブは9件と約半分を占めていました。
公開された地域のデジタルアーカイブを拝見させていただいているのですが、単に資料を公開するだけにとどまらず、その地域の特色を強調しながら公開されているという印象を受けました。
デジタルアーカイブのデータベースとストーリーの2つの要素
デジタルアーカイブはその構成という視点から、対象となる地域やコレクションの資料データベースとストーリーを語る部分の2つの要素から成ると言えます。
資料データベースとストーリー・・?この2つが何を指しているのかを説明します。
資料データベース
資料を管理している館や機関では、所有している資料のメタデータと現物と紐付けたデータを作成します。これは、デジタルアーカイブの基礎部分と言えます。
また、現物についてはデジタル化をして公開用のコンテンツデータを作成します。
これらのメタデータとコンテンツデータをデジタルアーカイブシステムに投入して、一般に公開することになります。
メタデータの充実は検索性をあげますし、コンテンツデータの作りこみは、居ながらにして原本を閲覧と同等な目的を果たせます。
ストーリーを語る部分
このストーリーを語る部分と言っているのは、デジタルアーカイブサイトの中で、検索する画面やその一覧や詳細表示以外のところになります。
具体的には、そのコレクションの成り立ちなどデジタルアーカイブの概要を説明する画面や、特定資料や特定の分類の説明している部分のことをここでは言っています。
ストーリーから始まるのがわかりやすい
あるデジタルアーカイブを初めて訪問したとき、それがどんなコレクションなのかわからないのに、キーワードを何かしら入れないとコンテンツが見られない。でも、何のキーワードを入れたらいいのかわからず、しばらく画面の前で固まってしまったことが私は何回かあります。
資料を語ってくれるストーリーがあれば、先にそれを見ていきたいと思います。
そして、私のように考える人はたくさんいると思います。
デジタルアーカイブサイトを訪れる人たち
デジタルアーカイブサイトを訪れる人たちを、そのサイトに公開されている内容の熟知度で3つに分けてみました。
コンテンツ内容の熟知度で分けた層
一番上は、専門家の層です。既にその地域の文化などは熟知しており、目的のものを探すキーワードを持ってサイトにアクセスする人たちです。この人たちは、再度そのデジタルアーカイブサイトに訪れるリピート率も高く、また、色々な角度からの検索も行うことが多いのでサイトの滞在時間も長くなります。
次は、その地域の住人だったりなどある程度地域のことを知っている層になります。何となく知っている地名などのキーワードを入れて検索してみたりもします。1つの検索結果とそれとは異なる検索結果はあまりつながっていません。サイトの滞在時間は比較的短いです。
最後は、その地域のことは全く知らないでそのデジタルアーカイブのサイトに来た層になります。検索キーワードも思いつかず、画面の前で固まってしまいます。1つ2つ思いついたものを入れてサイトを離れてしまいます。
ストーリーは、サイトを訪れる人を増やす
ストーリーは、この真ん中の層(ある程度地域のことを知っている)と一番下の層(地域のことは何も知らない)に働きかけます。ストーリーが充実していれば、デジタルアーカイブを訪れることによって、地域の歴史や行事、名産などを知ることができます。知識を得ることができ、名産を買いたくなったりするかもしれません。
これらの層のアクセスは、デジタルアーカイブの訪問数を底上げすることができるでしょう。
サイトを訪れた人は、資料データベース中にあるたくさんのストックされたコンテンツデータの閲覧とつなげて表示されることで、地域の理解をさらに深めることができます。
ストーリーを語る部分で世界観を表す
文章で表された(言語化された)内容とともにデジタルアーカイブサイトのデザインなどもストーリーの一部です。デザインは世界観を表すことに大きく貢献します。
今後、ストーリーを語る部分が充実したデジタルアーカイブサイトがどんどん増えていけばよいなと思います。
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ストーリーを描いたデジタルアーカイブ公開例
最後に弊社のお客様で、デジタルアーカイブ公開のなかでストーリーを描いている例をご紹介いたします。
■あきる野市デジタルアーカイブ
「あきる野市を知るために」など、自由民権運動やあきる野市ゆかりの人々についての解説を資料画像入りで詳しく伝えています。読み物としてとても充実しており、それらページから資料一覧へスムーズに案内されています。
https://archives.library.akiruno.tokyo.jp/
■海図アーカイブ(海上保安庁)
わが国で最初に刊行された海図など貴重なコレクションを解説付きで公開しています。
近代的な海図を刊行するために測量を重視し、水路局が参考とした伊能忠敬の大日本沿海実測図についても解説されています。
明治の近代化ととも海図が刊行されていった歴史を振り返ることができます。
https://www1.kaiho.mlit.go.jp/kaizuArchive/
これらの事例のPDFは、以下のページからダウンロードできます。