デジタル化の見積を依頼する際に伝えるべき情報 ―その1(数量を伝える)―
貴重資料、紙資料のデジタル化を検討するにあたり、どのくらい費用がかかるのか把握するために正確な見積を取得しておくことはとても大切です。
見積の取得については、多くの場合デジタル化を行う委託業者さんに見積を依頼して得ることになるとおもいますが、見積を依頼する際にどのような情報を提供すればよいのでしょうか。
今回は委託業者さんに伝えることが必要になるいくつかの情報のなかから「数量」についてどのような情報を伝えると良いかポイントをまとめました。
目次[非表示]
貴重資料、紙資料のデジタル化に必要な見積とは
貴重資料、紙資料のデジタル化を行うための見積には、委託業者さんがデジタル化作業で行う主な以下の費用が漏れなく反映されていることが大切になります。
・資料の貸与及び運搬
・サンプル作製(必要に応じて)
・スキャニングやデジタル撮影など画像取得及び検査
・画像編集及びファイル名や属性情報付与
・成果物等納品媒体作製
・納品業務、資料返却 など
これらの費用が見積に正しく反映されないと、デジタル化作業を安全に進めることが困難になってしまう可能性があります。
正確な見積を得るためには見積を依頼する側と見積する側がデジタル化に際しての課題やデジタル化の完成イメージを共有することがとても大切です。
その第一歩は見積依頼に際して必要な情報を用意することにあります。
見積の為に必要な情報 ―数量― について
デジタル化する対象の資料がどのくらいの数量になるのかという情報になります。
見積依頼時に提示する「数量」に関する情報は概ね以下の2種類となります。
1. デジタル化予定コマ数(ファイル数)
デジタル化対象資料の資料枚数の情報となります。この「枚数」を示す単位は「コマ数」「ファイル数」と呼ばれることが多いです。
多くのデジタル化作業では
「デジタル化予定コマ数×1コマ(1ファイル)あたりのデジタル化作業単価」
をもって予算の検討等をおこなうことが多いと思います。
後述しますがページ数の把握ができていても、実際デジタル化を行ったコマ数とデジタル化予定コマ数はほぼ異なることになるため、ここで算出する数量についてはあくまでも予定数量であることを関係者で共有しておくことが大切です。
また、実際の作業にあたり
「デジタル化予定コマ数」<「実際のデジタル化コマ数」
となった場合、予算が足りず予定していた資料の全てをデジタル化できなかった、ということなってしまうため、見積依頼時に提示するデジタル化予定コマ数については、ある程度安全な数量で算出することも大切になります。
デジタル化予定コマ数の算出方法についてはページ数(枚数)が管理されていればページ数(枚数)、ページ数が不明な場合には資料の厚みからおおよその数量を算出します。
ページ数(枚数)≒コマ数になるかどうかは、デジタル化する際の画像の取得方法によりかわっていきます。例えば1ページ単位で画像を取得する場合にはページ数≒コマ数(後述しますが、正確にはページ数+表紙裏表紙等ページ数に反映されていない数量を追加することが必要)となりますが、冊資料で見開き1画像の画像を取得する場合には見開き2ページが1画像となるため、2ページで1コマとなります。
画像の取得方法によって予定数量の算出方法が異なってくるので、デジタル化の見積依頼をする際にデジタル化する画像の取得方法(冊であれば見開き1画像とするか、1ページ1画像とするか)及び数量を算出した方法をデジタル化委託業者さんに数量と併せて伝えることが大切となります。
次項では具体的な数量の算出方法をまとめました。
1)ページ数からデジタル化予定コマ数(ファイル数)を算出する方法
デジタル化対象資料のページ数等が把握されている場合にはある程度精度の高いデジタル化予定数量を算出することができます。
画像取得方法が見開き1画像とする場合は前項の通り2ページで1コマとなるので
ページ数 ÷ 2
でおおよそのコマ数を算出し、その数量に表紙、奥付、裏表紙の枚数を加算して算出することになります。
しかしここで注意するポイントがあります。
それは
ページ数 ≠ 資料枚数
ということです。
ページを表す数字「ノンブル」は資料の通し番号ではないため、ページ数が100ページとなっていても表紙や奥付・裏表紙、場合によって目次や折り込みなどページ数が記述されていない箇所もデジタル化対象範囲となるのであれば、デジタル化予定コマ数に加える必要があります。
その点を踏まえると、ページ数からデジタル化予定コマ数を算出する方法は以下の通りとなります。
総ページ数 ÷ 2 + ノンブル対象外資料分コマ数※ ≒ デジタル化予定コマ数
※表紙などは表紙の表と裏のそれぞれ1画像を取得するので表紙1枚あたり2コマとなります。このことから基本的にはノンブル対象外資料枚数×2コマで概算数量を算出します。
ノンブル対象外資料枚数は同一資料でも異なることがあるため、正確に算出することは難しいことが多いです。
そのため何点か類似した資料を確認しノンブル対象外資料枚数が多かった資料の数量を基準値としてデジタル化予定コマ数を算出すると安全な予定数量になると思います。
2)資料の厚みからデジタル化予定コマ数(ファイル数)を算出する方法
デジタル化対象資料のページ数等が把握されていない場合には、資料を1ページずつ数えることは難しいため、資料の厚みからおおよそのデジタル化予定数量を算出することになります。
厚みから紙の枚数を予測する考え方の一つに「ファイルメーター」という考え方があります。一般的にファイルメーターで示す文書量は1メートルあたり約10,000枚相当といわれていますので、1センチあたり約100枚と予測することができます。しかしデジタル化対象資料は、さまざまな紙の厚みがあり、また表紙・背表紙など厚みの異なる部分もあるため、デジタル化対象資料の長さを図ってファイルメーターの予測枚数をあてはめてることは適切ではないと考えます。
ある程度の精度を求めるのであれば、手間はかかりますが実際に数ページを数えてコマ数(ファイル数)を算出する方法があります。具体的な方法は以下の通りです。
①デジタル化対象資料の表紙、背表紙部分を除く本文1センチ分の枚数を実際に数えます。
例:1センチあたり約95枚=約190ページ※
※資料1枚が表裏印刷されている場合には表と裏で2ページ分になりますので約95枚は約190ページとなります。
②本文の厚みを計測し、①で算出した1センチあたりの枚数から本文の枚数を算出します。
例:本文の厚み 4センチの場合 4センチ×約95枚≒380枚=約760ページ
③デジタル化画像取得方法により本文のコマ数(ファイル数)を算出します。
ア)見開き2ページで1画像を取得する場合には、2ページで1コマとなるため表裏印刷資料の場合は②の算出したページ数÷2ページ≒予定コマ数となります。
例:約760ページ÷2ページ≒380コマ
イ)片ページ1ページで1画像を取得する場合には、ページ数が予定コマ数となります。
例:約760ページ→約760コマ
④前述の方法で表紙や裏表紙分のコマ数を加算します。
例:約760コマ+(表紙、裏表紙 2枚×2コマ)≒764コマ
⑤同一資料が複数ある場合には1冊当たりの厚みとコマ数から資料全体の長さを計測し予定コマ数を算出します。
例:1冊当たりの厚み5センチで約764コマ
資料全体で80センチの場合 80センチ÷5センチ×約764コマ≒12,224コマ
⑥資料の厚みからコマ数を算出する方法は前述したページ数から算出する方法より実際の数量と差異が発生することが多いため、安全なコマ数算出のために約10パーセント~15パーセント程度加算し、さらに全体を考慮して1の位もしくは10の位等で端数の切上げをします。
例:1冊の場合 約764×1.15≒880コマ
資料全体の場合 約12,224コマ×1.15≒14,100コマ
上記の通り厚みから予定コマ数を算出する方法は、算出した予定コマ数と実際作業したコマ数の差異が発生することが多いため、安全な予定数量算出の為に多めにコマ数を想定しておくことが大切になります
2. デジタル化予定 冊数、点数
デジタル化対象資料の物理的な個体数の点数となります。個体数の点数となりますので、「冊」「点」や形態によって「軸」などで表す場合もあります。
物理的な個体数についてはページ数と異なり個体管理されていることが多いと思いますので、管理されている数量を委託業者さんに伝えることで多くは解決すると思います。ただし管理されている数量と実際の資料数量が異なっていることもあるため、事前に確認をしておく必要があると考えます。
まとめ
今回は見積に必要な情報のなかで「数量」についてまとめてみました。数量を算出するためにいくつか方法がありますが、とくにコマ数(ファイル数)については慣れていないとデジタル化予定数量を算出することは、なかなか難しいと思います。
資料ページ数の管理がされていない、
資料の枚数を算出した経験がないし、その時間もない
そんな時には委託業者さんに相談してみても良いかもしれません。
経験豊富な委託業者さんは大まかな数量を算出する方法を知っていることが多いため、数量算出について助言や力を貸してもらえると思います。
参考URL
・国立国会図書館資料デジタル化の手引2011年版(平成23年8月改訂)
https://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_10341525_po_digitalguide170428.pdf?contentNo=1&alternativeNo=