もしかして劣化してる? マイクロフィルムからイヤなニオイを感じたら...
マイクロフィルムから酸っぱい臭いを感じますか?
酸っぱい臭いの原因は劣化したマイクロフィルムから発せられる酢酸によるもので、酢酸臭といいます。
この酢酸臭はマイクロフィルムの劣化が始まったことを知らせる合図ですので、なるべく早く対処する必要があります。
嫌な臭いがするフィルムを使うのも、保管場所で酢酸臭が漂うのもいい気分がする人はいないですよね。
とはいっても、何をすればよいか、何から手をつければいいか迷うと思います。
この記事では、マイクロフィルムの劣化とはなにか、劣化したマイクロフィルムはどうすればよいのか、そして、マイクロフィルムの劣化が気になったときに、最初に行ってほしいフィルムのサンプリング調査(一次調査)について紹介します。
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マイクロフィルムの劣化とは?
マイクロフィルムには、ロールフィルム(35mmと16mm)・マイクロフィッシュ・アパチュアカードなどといった形状のものがあり、さらにベースによる区分、NCベース(ニトロセルロース)・TACベース(三酢酸セルロース)・PETベース(ポリエチレンテレフタレート)に分けられます。
一般的にマイクロフィルムの劣化として多くみられるのは、ロールフィルムのTACベースフィルムにおける劣化現象で、俗にいうビネガーシンドロームです。
ビネガーシンドロームとは、空気中の水分や熱などによってTACベースが加水分解という化学反応を起こし酢酸ガスを発生させる現象のことで、これによりフィルムのべたつきや波打ち、ひどい場合はプラスチックリールを溶かしてしまうほどの強烈な酢酸が発生します。
また、劣化がひどくなるほど酢酸臭も強烈となり、劣化フィルムと同じ空間で保管している他の資料に臭いが移ったり、エアコンなどの空調機器等の故障の原因になったり、さまざまな悪影響をおよぼします。
では、シート状のフィルム(マイクロフィッシュやアパチュアカード)に比べ、なぜロールフィルムのほうに劣化症状が多くみられるかというと、シート状のフィルムは1シート単位でフォルダなどに収納されていたりするため、酢酸ガスが滞留することが少なく、常に空気中に放酸されるため劣化が進行しづらい傾向にあります。
対してロールフィルムは、フィルムが巻かれていることにより常にフィルムどうしが接しているのと、特に古い時代に作製されたフィルムは金属缶などの密閉容器に入れられているケースが多く、一度酢酸ガスが発生するとフィルム内部や容器内で酢酸が滞留し、加速度的に劣化が進行してしまってひどい劣化症状になるケースが多くみられます。
劣化したマイクロフィルムはどうすればいいの?
劣化しているマイクロフィルムはもう使えないのでしょうか?
いいえ、劣化してしまったマイクロフィルムでも劣化のレベルによってはまだ救うことが可能な場合があります。
例として、マイクロフィルムのデジタル化を目的とする場合の劣化レベルごとの対応策を書かせていただきます。
【劣化レベルⅠ】
酢酸臭は少々感じられるが、波打ちなどの変形はおきていない。
フィルムに変形はおきていないが、少しでも酢酸臭が感じたら劣化の初期段階です。
劣化が進行する前にフィルムスキャナーにてデジタル化を行います。
【劣化レベルⅡ】
酢酸臭をはっきりと感じ、波打ちなどの変形もおきている。
劣化が進行しています。
変形しているためそのままフィルムスキャナーにかけてデジタル化を行うと、フィルム破損の危険性やピンボケなどの不良画像が作製される可能性が高いため、まずフィルムの複製をつくり、複製フィルムよりデジタル化を行います。
【劣化レベルⅢ】
酢酸臭を強烈に感じ、激しい波打ちなどの変形がおきている。
極度の劣化状態です。
そのままでは複製フィルムを作るのは困難なため、平面化処置を行いフィルムをフラットな状態にしてから複製フィルムを作り、複製フィルムよりデジタル化を行います。
【劣化レベルⅣ】
触るだけでフィルムが崩壊し枯れ葉のような状態。劣化のピークを過ぎているため酢酸臭は不思議と落ち着いている。
この状態になると残念ながら救いようがありません。
フィルムの廃棄も検討しましょう。
マイクロフィルムがどんな状態か調べてみよう
前章のとおり、たとえばマイクロフィルムのデジタル化を行おうとしたとき、もしフィルムの劣化が懸念される場合は劣化レベルによって複製フィルムの作製が必要だったり平面化処置が必要だったりと、デジタル化作業以外に行わなければならない作業が追加で発生します。
そこで必要になってくるのがマイクロフィルムの劣化調査です。
事前にマイクロフィルムの劣化状態を知ることにより、マイクロフィルムのデジタル化を行うとしてどのような作業が必要か、トータルでどのくらいの費用がかかるのかなどをざっくりと把握することが可能です。
まず行ってほしい劣化調査は、数本ごと(もしくはタイトルごと)に1本をピックアップしてフィルムの先頭1~2m程度を引き出して外観を調査するサンプリング調査(一次調査)です。
フィルムの先頭部分のみを確認するかたちですが、先頭の劣化症状をみればフィルム全体の症状もおおむね把握することが可能です。酢酸臭の有無や歪みなどフィルムの状態確認、ベースの判定、使用されている包材(収納容器、帯、リール)の材質などもチェックします。
このサンプリング調査のメリットは、限られた時間と人員と費用であっても比較的容易に実施できることにあります。
当社ではこちらのサンプリング調査を、希望された顧客へうかがい無償で行わせて頂いております(半日~1日程度での調査)。
サンプリング調査ではすべてのフィルムの劣化状態を確認することはできませんが、おおむね同じ時期に購入や作製されたフィルムであれば同じような劣化症状であるケースが多いため、全数調査しなくてもおおまかな劣化状態を把握することができます。
まとめ
マイクロフィルムは一度劣化が始まるとどんどん劣化が進行します。
フィルムの臭いなどが気になりはじめたら、取り返しがつかなくなる前に一歩踏み出して、まずは全体の劣化状況をざっくりと把握するサンプリング調査(一次調査)を行いましょう。
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