デジタルアーカイブを支えるメディアの長期保存 3つのポイント
デジタルアーカイブに取り組むうえでは、イメージデータやメタデータ用のテキストデータなど様々なデジタルデータが発生します。今回はこうしたデジタルデータを、光ディスクで長期保存するためのポイントをご紹介します。
ポイント①:良質な環境で保管する
光ディスクの期待寿命は諸説ありますが、保管環境が悪いほど媒体の寿命は縮まります。
デジタルアーカイブといえばデジタルデータを長期的に保存することが前提となっている中、
突然に「イメージデータのファイルが開けない」、
「メタデータの元ファイルであるCSVファイルが開けなくなった」
などといったトラブルが生じれば、致命傷にもなりかねません。
日常においても久しぶりに聞こうと思った音楽のCDや、観ようと思った映画のDVDが再生できなくなっていたといった経験をした方も少なくないと思います。
光ディスクにとって最大の「敵」は、主に次の3つがあります。
①高温
メディアが歪むなど、変形が生じる恐れがあります。
②多湿
メディアの反射膜が、酸化します。
③太陽光
メディアの色素膜が劣化します。
このような環境下でメディアを保管していると、
ファイルが開けなくなったり、中のデータが壊れたりする可能性が高まります。
光ディスクなどのようなデジタルメディアの怖いところは、外見からは劣化の進行度を判断できないことです。
読み取り装置にかけてみたら見ることができなかったといった事態に陥るのです。
そのような事態にならないための良質な環境とは、次のようなものを指します。
①温度管理
保管環境における温度を、10℃~25℃に保ちます。
②湿度管理
保管環境における湿度を、40%~60%に保ちます。
③暗所保管
直射日光は避け、キャビネットに保管します。
これらはJIS Z 6017:2013に定められています。
その他にもメディアに傷や指紋がつかないよう、
ディスクの中央やエッジ部分を持つようにするなどの注意も必要です。
ポイント②:長期保存にふさわしいドライブとメディアを選定する
デジタルデータを長期保存するためには、
「データを記録される側」のメディアと、
「データを記録する側」のドライブ、
この2つのクオリティーと相性がカギになります。
「データを記録される側」のメディア は、 国際規格ISO/IEC10995、またはISO/IEC16963が定める光ディスク寿命推定試験など、 この規格に準拠した試験を通過し、 その推定寿命が30年以上と確認された光ディスクを使用することが一つのポイントになります。
「データを記録する側」のドライブは、 長期保存の光ディスク用にチューニングされ、良好な記録品質が確認されたドライブを選定します。
こうした光ディスクとドライブの組み合わせを検証し、十分な品質を確保できる組み合わせについては、
公益社団法人 日本文書情報マネジメント協会(JIIMA)が認証しています。
この認証制度においてJIIMAは、
『認証を受けたディスクとドライブの組み合わせで、ディスクに記録した時の品質は、JIS Z 6017(電子化文書の長期保存方法)の規定で定めるところの「良好な状態」を満足するとともに、ディスクは ISO/IEC 16963 準拠の寿命試験で推定寿命が30年以上あることとしています。』と上記のWebサイトで示しています。
こうした機関で認証された製品を選ぶと安心です。
ポイント③:記録品質を確認する
光ディスクのデータ記録の品質は、 「PIエラー値」と呼ばれるエラーの値で数値化することができます。
このエラーの値はエラーチェッカーと呼ばれる装置で測定します。
値が高ければ高いほど長期保存には適しておらず、リスクが高い状態であることを示します。
こちらもJIS Z 6017『電子化文書の長期保存方法』に定められています。
この規格では、
光ディスクへの書き込み時と、
検査時期の目安である5年経過後に測定した時の数値が、
下の表のように示されています。
このPIエラーの値に応じて、記録媒体の品質を客観的に判定することができます。
長期保存に耐えうる状態かどうかや、値に応じて講じる対策時期などが示されています。
デジタルアーカイブにおいて、
デジタルデータを長期保存するために、
どのような媒体や手法を使うかは非常に重要な問題です。
光ディスクメディアを選択した場合はこの3つのポイントを参考に、
安全に保管しましょう!