アーカイブ資料の利活用「展示」を考える
夏休み期間もあって、各資料館、博物館、美術館では特別展が多く開催されています。多角的な表現で資料などを学ぶことの出来る展示は、展示されているテーマの理解を深めることができます。今回はデジタルアーカイブの最終形と言える展示について考えてみます。
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展示はデジアカの流れのどこに位置づけられる?
私たちがデジアカと呼んでいる一連のサービスですが、下の図にあるように、左から右に流れていきます、
まず、「原本(原資料)」があり、次に目的に応じた「デジタル化」、「デジタルでの保管」、「サービス」ではデジタルアーカイブの公開などをイメージしています。一番最後はさらにその資料を活用する「利活用」となります。
展示は、一番右側の利活用に位置づけられます。
公開しているデータを広く閲覧させるデジタルアーカイブシステムでのサービスとは異なり、提供する側がテーマに沿ったアーカイブ資料を選択し、展示方法を検討して、新たなものを作っていくことになり、まさに最終形といえるでしょう。
デジアカの流れ
アーカイブ資料を使用した展示の方法
アーカイブ資料を使用した展示にはどんな種類があるのか見ていきましょう。
パネルで内容を解説する
アーカイブス資料の展示で最もよく使われるのはパネル展示です。資料を掲載して、その傍らに解説を提示するというのが一般的です。資料と解説が一体となるので、観覧者に資料をわかりやすく伝えることが出来ます。
パネル展示
パネル展示は、どうしても読むことが主となり、観覧者もパネルを読むという意識を持って展示に向き合うことが必要になります。
じっくり読むことは少なくなってきている昨今は、読みやすさの工夫も多々行われています。
見出しの利用や図解、レイアウト構成など最近のパネル展示では以前と異なり、わかりやすさに工夫が見られます。
現物やレプリカ
観覧者にとっては、展示会場に行くことで現物の資料を見られるメリットもあります。現物は、その存在に力があり、見る人を圧倒させます。
ただし、現物を誰もが触れるわけでありません。原資料は多くの人の手に触れられれば、劣化が進んでしまう恐れもあります。
その対策もあって、資料のレプリカを作り捲って見てもらう方法もあります。冊子体の資料などはガラスのケースに入って開いたまま置かれていることがありますが、他のページは見ることができません。しかし、レプリカであれば全てのページを自由に開いて閲覧できます。
会場の大きさを活かした展示物
多くの展示会場で行われていることですが、床に地図などの画像を示ししたり、遠くから見てわかるようなペナントを設けたりします。
特に会場の床に地図などのイメージを広げると、会場全体の雰囲気が変わり世界観が演出できます。
床に敷かれた地図
デジアカでできること
ニチマイは、確かなデジタル化技術で展示もサポートします。
高精細スキャン
高性能な入力機器により高精細スキャンが可能です。使用する入力機器は色の再現性に優れ、資料の細部までも再現可能な性能を有しております。
また毎日作業前に使用機器に対して、キャリブレーションを始め各調整を欠かさず行うことにより、安定した作業環境を整えております。
ファイルフォーマット
保存用画像と利用画像の2種類を通常作成・提供しています。
保存用画像には原資料を詳細まで再現するTiff形式などの可逆圧縮を提供いたします。
また、オーバースペックにならないように丁寧なカウンセリングを行ってお客様にとって最適なフォーマットでデジタル画像を提供いたします。
今、お勧めの資料展示
この夏お勧めの資料展示を紹介いたします。
・戦争と武蔵野IX(武蔵野ふるさと歴史館)
武蔵野ふるさと歴史館さまの「戦争と武蔵野IX」では、日本の資料とともに米国国立公文書館で収集した資料が多く展示されています。今回のテーマは、東京西部の基地に勤務する米軍陣と家族のための宿舎「グリーンパーク」です。このグリーンパークは中島飛行機の跡地に建設されました。この展示では、その中の生活の様子を窺える写真が解説付きで多数展示されています。
※米国国立公文書館における資料収集は、武蔵野市さまのご依頼を受けて弊社が行いました。
・工都展(板橋区立郷土資料館)
板橋区立郷土資料館さまの「工都展」では、板橋区内の印刷産業を軸とした板橋の工業化を紹介しています。
その地域今を知ることは容易にできても、その前はこのような展示がないとなかなか知ることが出来ません。
この展示では、
古地図の現物やその解説を示したパネルなどで構成されており、 過去を知り、今ある状態につなげて理解をすることが出来ました。
また、産学官連携プロジェクト(板橋区、株式会社トプコン、日本大学生産工学部)三次元測量技術やBIM技術を活用して研究を進めた成果が展示されています。
100分の1スケールの史跡指定地全域の模型や、会場設置のモニタでの史跡の3D映像なども展示され、より深い理解が進められるようになっています。
※参考記事
デジタル画像のフォーマットについて説明しています。
水路協会さまの展示を含めたプロジェクトについて紹介しています。