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劣化マイクロフィルムの正しい取り扱い方とは? 現場の声をお届けします!

ニチマイでは劣化マイクロフィルムを毎日のように取り扱っています。そこで、現場の担当者に劣化フィルムの取り扱い方などについてお話を伺ってみることにしました。
現場ではどのようなことに気を付けて劣化フィルムを取り扱っているのかお伝えします。


目次[非表示]

  1. 劣化レベルごとの主な症状について
  2. 劣化フィルムはどのように取り扱っている?
  3. 劣化フィルムがある場合、どんな対策をすべき?
  4. マイクロフィルムをお持ちの方へ
  5. まとめ
    1. 東京大学地震研究所さまの事例
    2. 参考ページ

劣化レベルごとの主な症状について

デジアカ担当者
劣化フィルムはそれぞれ劣化度のレベルが異なると思いますが、レベルごとにどのような劣化症状があるか教えてください。
 
劣化フィルム担当者
劣化レベル(小・中・大・重度)ごとに次のような症状がでています。


【レベル小】酢酸の臭いがする。フィルムに多少のヨレがある。

【レベル中】鼻を突くような酢酸臭がする。フィルムのヨレがひどくなる。

【レベル大】目を突くような酢酸放出。フィルムが硬化し、ヨレに加えて凹凸が出てくる。

【重度レベル】酢酸臭とは異なる臭いがしたり、臭いが無くなることもある。 ベースから湧出した液体状の可塑剤がフィルムにはりついて画像が剥がれたり、乾燥して亀裂や崩壊が起きる。


レベル小や中でしたらほとんど問題なくプリンタ(フィルム複製機)にかけられますが、レベル大でも劣化フィルム専用プリンタを使用して慎重に作業することで複製が可能となるフィルムもあります。

ただし、凹凸の状態によっては部分的にピントが甘くなる可能性があります。
重度レベルですと残念ながらプリンタにかけられず複製をとることはできません。
 
デジアカ担当者
今まで取り扱った劣化フィルムのなかで、最もひどい劣化が起きていたフィルムはどのような状態でしたか?
 
劣化フィルム担当者
ベース面から湧出した液状の可塑剤によってフィルムがはりついてしまい、フィルムを展開することができなかったものや、乾燥してフィルムが崩壊し、枯れ葉のようにボロボロになってしまったフィルムなど、様々な状態のものがありました。


劣化フィルムはどのように取り扱っている?

デジアカ担当者
社内で劣化フィルムの作業をする際、どのように取り扱っていますか?
 
劣化フィルム担当者
酢酸臭がほかのフィルムや資料などに移らないように、次のような対応をしています。

【作業場所】
劣化フィルムを取り扱う場合は「劣化対策室」という別室で作業しています。

【保管場所】
専用の別室で保管します。(24時間空調、除酢酸オドコップシステム導入)

【服装ほか】
服は不織布のフード・袖付のオーバーオールを着用。
呼気対策は酢酸用ガスマスク、眼球保護対策はゴーグルの着用をしています(※酢酸は有害物質指定640種に含まれるため)。


 
デジアカ担当者
酢酸臭対策は大変ですね…
劣化フィルムを取り扱う際、特にどのようなことに気を付けていますか?
 
劣化フィルム担当者
劣化フィルムは、ふちに細かな亀裂が入っていることがあるので、膜面には触れないようにして、あえて素手で取り扱うようにしています。
これは、手袋の繊維が引っかかって亀裂を広げたり、フィルムが切れたりすることを防ぐことが目的です。
また、劣化により破損のリスクが高いフィルムを取り扱う場合は、事前にお客さまに破損の可能性を説明し、了解を頂いてから作業に取り掛かるようにしています。
 
デジアカ担当者
破損のリスクが高いフィルムはより注意を払う必要がありますね。
ところで、酢酸臭の強い劣化フィルムを運搬する場合はどのような対策をしていますか?
 
劣化フィルム担当者
酢酸臭は紙製の箱やダンボールを透過するため、臭いを透しづらいビニール袋でダンボールごと覆って運搬しています。当社で使用している運搬用ダンボールの寸法に合わせた専用袋を用意し、使用しています。


劣化フィルムがある場合、どんな対策をすべき?

デジアカ担当者
お客さまが劣化フィルムをお持ちの場合、どのような対策をおすすめしますか?
 
劣化フィルム担当者
フィルムの保管目的や予算などにもよりますが、まずは現状の状態調査をおすすめしています。
フィルムの数量・コンテンツ・フィルム入手時の目的やコストなど、属性情報は保管対策判断上の重要な要素となります。
それに加えて、劣化状態を含む物理的情報取得が、保管対策の大前提となります。
 
理想的な保管方法は、劣化の強いフィルムを別置保管し、それ以外のフィルムを温湿度管理された部屋の開架棚に保管し、所定の周期で室内換気するのが考えられる最善な保管方法です。換気の代わりに酢酸の除去に優れた効果のある空気清浄装置を導入することも有効です。
 
その他の対策としては次のような方法が考えられます。

【劣化が始まったばかりのフィルム】

 ⇒「酢酸吸着シート」の使用と定期的な交換(※安価で手間がかからない)

【酢酸臭はあるが利用可能なフィルム】

    ⇒空気清浄装置(酢酸除去機能付)のある部屋での開架棚保管。
    ⇒なるべく早く複製や電子化を(※プリンタやスキャナの使用に耐えうる歪みレベルのうちに作業を)

【利用を諦めるレベルの歪みやべたつき、強い酢酸臭のあるフィルム】

    ⇒平面化技術による形状再生(※フィルムを平面化し、複製をとる)
    ⇒フィルム個体ごとに酢酸吸着シートを同梱し密閉保管。(※劣化の進行は止められない)                                                                                                     

【媒体変換が認められず、現状のフィルムのまま保管が必要な場合】

 ⇒低温・冷凍保存(※設備投資等のコスト大)


マイクロフィルムをお持ちの方へ

最後に、マイクロフィルムをお持ちの方へ伝えたいことがあればお願いします。
 
劣化フィルム担当者
マイクロフィルムでしか存在しない貴重情報が多々あると思います。貴重なフィルムが劣化している場合は早めに電子化や複製をとるなどの対策をおすすめします。
 
マイクロフィルムの劣化は残念ながら止められませんし、劣化してしまったフィルムを元に戻すこともできません。
ですので、優先順位を決めて計画的に媒体変換することが有効です。
 
こんなにも劣化していたフィルムが、いざ複製や電子化をしてみると意外ときれいに再現されたということが多々あります。                                                                                                       
劣化フィルムをどうしようかお悩みの方。あきらめる前にぜひ一度ご相談ください。
 
コレクション全体の状況を数量的に把握できれば、予算・行動の計画が立てられます。
繰り返しになりますが、特にお伝えしたいことは「まずは現状を知ること!」です。
だれでもできる「負荷が少ない、優しく簡単な調査」をまずはやってみましょう。
 
デジアカ担当者
利用をあきらめていたフィルムでもまだまだ救える可能性があるということ、そのためにはまずは現状を調査してフィルムの状態を把握することから始めるということですね。
まず簡単な調査から始めるのであれば、そこまで難しくはなさそうです。
実際の経験から劣化フィルムの対策について詳しく教えていただきありがとうございました。

まとめ

実際に日々劣化フィルムを取り扱っている作業担当者から詳しい話を聞くことができました。大事な点は次のとおりです。


・まずは現状把握

・劣化フィルムはなるべく早く複製や電子化を

・利用をあきらめていたフィルムでも救える可能性がある


デジアカでは「劣化マイクロフィルム救済対策」としてお客さまが抱えている劣化フィルム問題に対応いたします。フィルムの劣化でお困りでしたら一度ご相談ください。


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東京大学地震研究所さまの事例

  【導入事例】東京大学地震研究所様 劣化フィルムの平面化による修復作業|デジタル化で資料の利活用を推進するならデジアカ 【導入事例】東京大学地震研究所様 劣化フィルムの平面化による修復作業は当ページからダウンロードいただけます。デジタルアーカイブでお悩みの方はぜひお気軽にご相談ください。 デジアカ


参考ページ

  劣化マイクロフィルム救済対策|デジタル化で資料の利活用を推進するならデジアカ デジアカの「資料デジタル化サービス」を紹介します。デジアカは、地方自治体や民間企業などで所有される貴重書やマイクロフィルムのデジタル化を一気通貫で支援します。 デジアカ






Kudou
Kudou
ニチマイの営業担当です。デジアカサイトでは少しでもみなさまのお役に立てるような情報を発信していきたいと思っています。デジタルアーカイブの知識をこれからも日々勉強してまいります。