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デジタル化の正確な見積の為に必要な情報とは。 ―その3(資料状態編)ー

貴重資料、紙資料のデジタル化計画にあたり、正確な費用の算出は大切な要素となります。

デジタル化を行う委託業者さんに見積を依頼する際に、どのような情報を提供すればよいのでしょうか。ポイントをまとめました。

目次[非表示]

  1. 貴重資料、紙資料のデジタル化に必要な見積とは
  2. 見積の為に必要な情報 ―資料状態― について
    1. 1.デジタル化対象資料の劣化状況
      1. 1)破損・虫損状況
      2. 3)汚損・カビ等
    2. 2.資料の開き具合等
      1. 1)資料の開き具合等
      2. 2)資料の綴じ不良等
    3. まとめ
  3. 参考URL

貴重資料、紙資料のデジタル化に必要な見積とは

貴重資料、紙資料のデジタル化を行うための見積には、デジタル化にあたり委託業者さんが行う全ての業務に係る費用が漏れなく反映されていないと、デジタル化事業を安全に進めることが難しくなってしまいます。

正確な見積を得るためには見積を依頼する側と、見積する側がデジタル化に際しての課題やデジタル化の完成イメージを共有することがとても大切です。

その第一歩は見積依頼に際して必要な情報を用意することにあります。


見積依頼に際して必要な情報のうち、前回は資料の形態や大きさ等に関係する「資料情報」(前回の記事はこちら!) についてお伝えしましたが、

  デジタル化の見積を依頼する際に伝えるべき情報 貴重資料、紙資料のデジタル化計画にあたり、正確な費用の算出は大切な要素となります。デジタル化を行う委託業者さんに見積を依頼する際に、どのような情報を提供すればよいのでしょうか。ポイントをまとめました。 デジアカ



今回は資料の劣化状況やページの開き状況などの「資料状態」について委託業者さんへどのような情報を伝えると良いかポイントをまとめました。


見積の為に必要な情報 ―資料状態― について

「資料状態」とはデジタル化対象資料の劣化状況やページの開き具合などについての情報になります。

資料のデジタル化において資料の劣化状況やページの開き具合などの情報は、以下の事項を検討するために必要になります。

・資料の劣化状況や開き具合に合わせたデジタル化手法の検討

・資料の劣化状況等によってはデジタル化が難しい場合、修復や資料の解体などデジタル化以外の作業の検討

・デジタル化に使用する機器の選定の検討

これらの作業はデジタル化費用に大きく影響しますので、見積の為に重要な情報となりますので正確に伝える必要があります。

見積依頼時に提示する「資料状態」に関する情報は概ね以下の2種類となります。


1.デジタル化対象資料の劣化状況

デジタル化対象資料が〈どのように〉〈どのくらい〉劣化しているかの資料状態の情報になります。

安全にデジタル化を行うために、資料の劣化状態によってデジタル化を行う前に資料に対して修復等の措置が必要な場合や、デジタル化で使用できる機器に制限が出る場合があります。

資料の劣化状況によってデジタル化作業以外で必要な作業が発生する可能性や使用できる機器が劣化状況によって異なることになり、これらの要素によって見積の金額が異なってくるため大切な情報となります。

劣化状況に関する主な情報は以下の通りとなります。


1)破損・虫損状況

経年劣化等の原因で紙の耐久性が落ちてしまい資料が破損している場合や、虫食いによる資料の破損、また使用方法や保管方法が適切でなく破損してしまった資料状態の情報となります。

資料がこのような状態のままデジタル化を実施してしまうと、資料の破損個所を広げたり、資料の欠損等により資料の散逸につながってしまうおそれがあります。

デジタル化を安全に行う上で修復等の措置が必要になるか判断するための情報となり非常に大切です。
また、破損・虫損資料に対する修復等の措置に関してはデジタル化業者さんではなく、修復等の専門業者さんが行う必要が出てくるため、どのような委託形態にするかも検討が必要となる場合が多くなるためその点でも重要な情報となります。


2)折しわ等の変形状況

資料の一部に折れしわがついてしまい資料が変形してしいまい、文字の判読性確保が困難な資料になります。

連続して折れしわがついてしまっている場合、複数個所においてしわ伸ばしの工程が必要となり見積費用が大きく異なる場合がありますので、軽視できない情報となります。

また、折れしわが強くついており且つ紙の耐久性が落ちている資料はそのまましわを伸ばすと破損してしまう可能性があるため、しわを伸ばす作業自体を修復等の専門業者さんに委託する必要もあるため、上記1)の破損・虫損状況と同様に大切な情報となります。


3)汚損・カビ等

汚損やカビ等が資料に発生してしまい、文字の判読性の確保が困難になったり、資料保全上問題があると思われる資料状態の情報です。

汚損やカビ等は文字の判読性の低下などによるデジタル化画像の品質低下だけでなく、汚損物質やカビが原因でデジタル化に使用する機器が故障してしまう恐れがありますので、正確に受託業者さんに伝えてあげましょう。

汚損やカビ等が生じている資料に対しては、デジタル化を行う前に資料に対する清掃作業や、修復等の専門業者さんによる措置が必要になります。

これらの作業によって見積費用が大きく異なる場合がありますので、正確に伝える必要があります。


2.資料の開き具合等

主に冊子体の資料において、資料の開き具合等に関する情報となります。

資料が糸や糊等で綴じられている冊子体の資料は、ページを見開いた状態でデジタル化を行うことになりますが、文字の判読性が悪い場合には綴じてある資料へ解体等を行い文字の判読性を確保する必要があります。

また、解体した資料はデジタル化した後に、綴じ直しもしくは中性紙の保尊箱等への収納などについても併せて検討しないと解体した資料は散逸してしまう恐れがあり、開き不良を解決するためにはデジタル化とは別に様々な費用や、検討事項が発生することになるため、とても大切な情報となります。


1)資料の開き具合等

主に冊子体資料を見開いた際に、背に接する「のど」部分の文字が判読でるか否かの情報となります。冊子体資料の厚みや綴じられている位置によって、見開いた際に「のど」部分の文字が綴じ部分にかかってしまっており文字が判読できない状態などを指します。

この事象を安全に解決するためには、冊子体資料を解体するということになりますが、解体方法によってはデジタル化業者さんによる解体が困難で、専門業者さんによる解体が必要になる場合があります。
また解体した資料について、デジタル化後解体されたまま保管・保存することは資料散逸の危険性が高いため、綴じ直しもしくは中性紙製の保存容器への収納等が必要になります。

綴じ直しについては、資料の解体も専門業者さんによって行う必要があったり、保存容器への収納については元の資料が排架されていたサイズと保存容器へ収納した後のサイズが異なるため、デジタル化後の資料排架場所等の保管場所の検討も必要になます。

「資料の開き具合が悪い」・・・一見細かい事象のように見えますが、検討事項が多岐にわたり、費用についても大きく差が出ることが多いとても大切な情報となります。


2)資料の綴じ不良等

冊子体資料は様々な方法で綴じられていますが、綴じられている方法が適切ではなく文字の判読性が困難になっている資料となります。

和装本などで発生する綴じ不良は袋とじになっている資料が表裏反対になって綴じられている、一部折り目がついたまま綴じられておりページを開くことが困難、天地逆に綴じられているなどがあります。

和装本の解体と綴じ直しについては綴じ穴が小さい、細い紐で綴じられている、綴じ穴部分の耐久性の問題などがあるため、資料の解体から綴じ直しまで修復や製本等の専門業者さんで行う必要がある場合が多いです。

合本製本などでは綴じられている部分に発行年や広告、古い新聞などでは株価や気象情報などが記載されており、解体しないと情報があること自体が分からない資料もありますので、判断が難しい事象となっています。

図書、雑誌の合本製本や新聞の製本資料については、背部分に情報があるか特に注意する必要があります。

合本製本の解体と綴じ直しについても、修復や製本等の専門業者さんで行う必要がある場合が多いです。


これら綴じ不良等の場合にも解体した資料について、デジタル化後解体されたまま保管・保存することは資料散逸の危険性が高いため、綴じ直しもしくは中性紙製の保存容器への収納等が必要になります。

そのため、前項の「資料の開き具合等」と同様検討事項が多岐にわたり、費用についても大きく差がつくとても大切な情報となります。


まとめ

今回は見積に必要な情報のなかで「資料状態」についてまとめてみました。

資料状態の情報について委託業者さん伝える場合には、メールや口頭では伝わりにくい場合が多く齟齬が発生したしまう恐れが高いため、対象資料を実際に委託業者さんに確認してもらうか、少なくとも画像等で提示して資料状態について委託業者さんと共有しておくことが重要となります。

デジタル化の対象となる資料、特に「デジタルアーカイブ」の対象となる資料は古い資料が多く含まれることが予想されます。古い資料に多く見受けられる劣化や開き不良の資料に対しては、様々な対応策が必要となり一つの委託業者さんのみでは解決できない事象も多く含まれるため、デジタル化計画を行う上で検討事項が多くなり困ってしまう事もあるかもしれません。そんな時にはデジタル化だけでなく、資料の修復や中性紙製の保存容器の作製など他の専門業者さんとの連携が多くある経験豊富なデジタル化委託業者さんにご相談してみましょう。過去の解決事例など参考になる意見をいただけると思います。

 
次回「デジタル化の正確な見積の為に必要な情報とは。」は―その4(作業場所・資料運搬 編)―になります。


参考URL

・国立国会図書館資料デジタル化の手引2011年版(平成23年8月改訂)
https://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_10341525_po_digitalguide170428.pdf?contentNo=1&alternativeNo=

・国立国会図書館と資料保存

https://www.ndl.go.jp/jp/preservation/pdf/preservation.pdf

・大阪府立中之島図書館本の部分の名称

https://www.library.pref.osaka.jp/site/osaka/book-parts.html

  資料のデジタル化サービス|デジタル化で資料の利活用を推進するならデジアカ デジアカの「資料デジタル化サービス」を紹介します。デジアカは、地方自治体や民間企業などで所有される貴重書やマイクロフィルムのデジタル化を一気通貫で支援します。 デジアカ


Hasegawa
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ニチマイの営業担当です。デジタルアーカイブに関して少しでも皆様のお役に立てるようにがんばります!