マイクロフィルムの劣化調査とは? 二次調査を行う意味はあるの?
マイクロフィルムの劣化対策では、まずは現状を把握してから今後の対策を検討することをおすすめします。
前回の記事では、マイクロフィルムの劣化調査(一次調査)でどのような項目をチェックしていくのか、調査のポイントをご紹介いたしました。
今回の記事では、一次調査よりも詳細な調査を行うマイクロフィルムの劣化二次調査(悉皆調査)についてご紹介いたします。
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劣化二次調査(悉皆調査)とは?
劣化二次調査は悉皆(しっかい)調査とも呼び、悉皆調査とはいわゆる全数調査、全部調査のことです。
サンプリング的な劣化一次調査に比べ、悉皆調査である劣化二次調査は手間や費用がかかる反面、誤差が少なくより正確な調査結果が得られるメリットがあります。
一次調査(サンプリング調査)と二次調査(悉皆調査)の比較は次のとおりです。
【一次調査】
調査対象フィルム:数本をピックアップ
調査方法:先頭より1~2mほど引き出しての外観調査
調査項目:ネガorポジ判別、フィルムベース、包材の種類、変形の有無、酢酸臭の有無など
調査場所:お客さま先のマイクロフィルム保管場所
調査実施者:各営業担当者※
調査費用:無料
【二次調査】
調査対象フィルム:調査依頼フィルム全数
調査方法:フィルムの先頭から最後まで巻き返しての全体調査
調査項目:一次調査各項目のより詳細な調査および酸性度の測定
調査場所:お客さまよりフィルムを預かり当社劣化フィルム対策室にて作業
調査実施者:劣化フィルム取り扱い専門員※
調査費用:有料
※当社における各営業担当者および劣化フィルム取り扱い専門員は、全員が公益社団法人日本文書情報マネジメント協会(JIIMA)認定の文書情報管理士1級以上取得者ならびにマイクロフィルム劣化調査経験者です。
前回の記事で、一次調査でサンプリング的な調査を行うことにより、おおまかな劣化状況を把握できるので、劣化対策の第一歩としてまずは一次調査を行うことをおすすめしました。
ただ、一次調査はあくまでサンプリング調査であり、一本一本の劣化状況の正確な判断まで行うことはできないため、より詳細な劣化状況の把握が求められる場合、二次調査を行う必要がでてきます。
マイクロフィルムの劣化要因として、経年劣化によるものや保管環境によるもの、何らかの理由で水分が付着したことによるものなど様々な要因が考えられるため、一概に同じ時期に製作した同じタイトルのフィルムの劣化状況が全て同じとは言えないことがあります。
そうした場合、二次調査を行うことでフィルム一本一本の劣化状況を測ることができ、その後の対策をより具体的に計画することが可能となります。
では、具体的に二次調査はどのような調査なのかご紹介いたします。
劣化二次調査(悉皆調査)のチェック項目
まず、悉皆調査には次の2つの意味があります。
①全数を調査という意味での悉皆。
②調査項目のすべてをフィルムの先頭から最後まで調査するという意味の悉皆。
つまり、一次調査(サンプリング調査)では全体から数本を抽出してフィルム先頭部分のみを調査していたのに対し、二次調査(悉皆調査)では対象フィルム全数についてフィルムの先頭から最後まで全体を調査するというものになります。
劣化二次調査(悉皆調査)でチェックする主な項目
【①書誌情報(フィルムごとの情報)】
資料名、フィルム番号など(一般的には台帳の情報)
【②基本項目(劣化調査時及び調査後に判定をする上での必須項目)】
ベース(TACorPET)、感材(銀-ジアゾ-ベシキュラ)、極性(ネガ-ポジ)の判別
※ベースの判別の意味
TACであれば以降の項目の調査が必要となりますが、PETであれば原則調査の必要はありません。
※感材の判別の意味
長期保存目的のフィルムは銀塩で作成されます。これに対し、ジアゾやベシキュラは比較的安価であるため、配布用や中短期保存用として用いられました。
この判別により、対象フィルムのステータスを定めやすくなります。
※極性の判別の意味
ネガ状のものは、オリジナルまたはこれに準ずる複製物(DDフィルム)であるのに対し、ポジ状のものは複製としての生成物なので、オリジナルからの再複製もしくは出版物であれば再購入が可能となります。調査後のアクションプランの大きな参考となります。
【③属性項目(複製作業や保存管理、取扱い上必要な項目】
張りつき(べたつき)、ねじれ、臭い、変色など
【④劣化度測定(一次調査における大・中・小の判断より精度の高い判定)】
ADストリップの色差の数値化
【⑤その他(劣化原因判定上の大切な環境情報)】
リール(金属スプール-プラスプール-プラリール)、箱(紙箱-プラ箱-金属缶)など
劣化二次調査(悉皆調査)で作成する調査簿の例
劣化二次調査(悉皆調査)のメリット
悉皆調査では対象フィルム全数についてフィルム全体を調査することにより、フィルム個々のより詳細な劣化状態データを取得することが可能となるため、今後の劣化対策をより具体的に計画することができます。
特に劣化が進んだフィルムにおいては、フィルムの外周部と巻き芯付近との劣化度の差が大きいことがあるため、フィルム全体を展開することで正確な劣化状態を把握することができる悉皆調査には大きな意味があります。
また、TACベースフィルムは、発生した酢酸について巻き返しを行うことにより放散させることが推奨されているため、悉皆調査における巻き返しにより放酸されるというメリットもあります。(※処理後おおよそ25年を経過したTACベースフィルムは、3~5年ごとに放散処置を全数について行うのがよい:JIS Z 6009参照)
そして、劣化二次調査(悉皆調査)の最も大きなメリットは、その後のフィルム管理に関して、明確な方針設計が可能になるということです。
全てのフィルムの状態、劣化レベルを把握することで、必要な対策、劣化レベルごとの数量、今後の対策にかかる各作業コストが明確になります。
まとめ
今回の記事ではマイクロフィルムの劣化二次調査(悉皆調査)のメリットについてご紹介しました。
当社では一次調査(無償)および二次調査(有償)ともに多くの実績を重ねてまいりました。
劣化マイクロフィルムでお困りのようでしたら、まずは一次調査からスタートし、より具体的な対策をとる場合に二次調査を行うことをおすすめいたします。
デジアカでは劣化マイクロフィルム救済対策として、みなさまのお役に立てる情報をこれからも発信してまいります。
みなさまからのご相談お待ちしております。