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デジタル化の仕様書を作成しよう!

仕様書の役割は、プロジェクトや製品の決まりごと、要件を明確に定義・共有することです。資料のデジタル化を進める際、「何を作るか・どのように作るか」を仕様書に明文化することで、関係者の間における認識のズレや「言った/言わない」を防ぐことができます。この記事では、資料デジタル化の仕様書の基本的な役割とその作成方法について解説します。

目次[非表示]

  1. 資料デジタル化の仕様書とは
  2. 仕様書を作成する目的
  3. 仕様書作成の基本ステップ
    1. 1.概要
      1. ①目的
      2. ②デジタル化の対象資料
      3. ③外部委託する場合の受託者要件
    2. 2.作業手順
      1. ①スキャニング前の準備作業
      2. ②スキャニング作業
      3. ③画像検査
      4. ④編集
    3. 3.その他
  4. まとめ

資料デジタル化の仕様書とは

資料デジタル化の仕様書とは、資料をデジタルデータに変換するための手順や基準を詳細に記載したドキュメントです。この仕様書には、デジタル化する資料の範囲、品質基準、使用する技術や機材の情報などが含まれます。具体的には、スキャニング前の準備作業、スキャニング方法、データフォーマット、受託業者側に求められる作業体制などが詳述されます。これにより成果物の作成とそのプロセスを標準化でき、一貫性のあるデジタル化作業を実施することができます。

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仕様書を作成する目的

資料デジタル化の仕様書を作成する目的は、プロジェクトの指針と成果物作成のプロセスを明確にし、全ての関係者が共通の理解のもとで業務を進めることができるようにすることです。仕様書は、プロジェクト開始前に全体像を把握するためのロードマップとして機能し、これにより作業の重複や抜け漏れを防ぐとともに、円滑なプロジェクト進行に役立ちます。またデジタル化事業を外部委託する際には調達要件としても活用できますし、デジタル化業者への提案依頼に使うこともできます。受託業者はその仕様書を見て、デジタル化の目的やスコープを特定し、スケジュールとコストの計画に活用することになります。

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仕様書作成の基本ステップ

資料デジタル化における仕様書作成は、プロジェクトの概要から始まり、以降はデジタル化の工程に従って作業手順を記述するのが基本となります。具体的な項目を見ていきましょう。

1.概要

①目的

ここではプロジェクトの目的をはっきりと示します。具体的には資料の利活用や共有、原資料の保全などが例として挙げられます。プロジェクトの起点となるため、関係者間における目的の共有はとても大事なポイントです。

②デジタル化の対象資料

デジタル化の対象となる資料のカテゴリーやタイトル、数量などを示します。リストがある場合は関係者に提供するとよりわかりやすくなります。またリストがあると、現物の資料とリストを突合することが可能になり、認識の齟齬などによるトラブルを防ぐことができます。

③外部委託する場合の受託者要件

資料のデジタル化を安全かつ正確に行うためには、様々な設備やスキル、ノウハウなどが必要です。特にデジタル化作業を外部に委託する際には、信頼できる業者を選定できるよう、ISOなどの認証要件や作業従事者の資格要件などを設けるのが一般的です。ISOでは国際品質規格ISO9001及び情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)国際規格ISO27001が考えられます。個人情報を含む場合はプライバシーマークの許諾も必要となるでしょう。また作業従事者の資格要件は、JIIMA(日本文書情報マネジメント協会)の認証資格である文書情報管理士が、官公庁や自治体などの調達案件においてもよく求められています。

JIIMA(日本文書情報マネジメント協会)の文書情報管理士

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信頼できる業者に委託するためにも、こうした要件をみたす業者を選定することが重要です。その他にもスキャナーに求められるスペックや作業場所のセキュリティなど様々な要件が考えられますので、こちらのホワイトペーパーを参考にしてみてください。

パートナーへの委託時に注意したいリスクとパートナー選定のポイントとは?


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2.作業手順

①スキャニング前の準備作業

資料を安全にデジタル化するために、資料の状態を把握する前準備作業を行います。資料の状態とは形状だけではなく、紙力や破損状況なども含みます。折れやしわなどがある資料をそのままスキャンすると破損事故にもつながりかねません。主な確認点は次の点になります。

・折れ
・しわ
・破れ
・劣化
・カール
・紙力(薄紙の有無なども含む)
・ノド部分の可読性

資料をデジタル化する際はこれらの状態を確認し、事前の整え作業を丁寧に行うよう仕様書に示すことが重要です。

②スキャニング作業

前準備作業とも連動していますが、使用するスキャナーは資料の状態によって最適な機材を選ばなければなりません。効率(=価格)だけを重視すると資料の破損事故などにつながりかねません。電子化対象資料が貴重資料の場合は、原則フィーダー式のスキャナーの使用は控えることをおすすめします。また使用するスキャナーは、求めている画像品質を確保できるスペックを保有していなければなりません。資料のサイズに対して求めている解像度や諧調を再現できるよう仕様書に示すようにしましょう。

<文例(抜粋)>

  • 有効スキャニング範囲はA3ワイドサイズ(330mm×460mm)以上としその際の光学解像度400dpi以上とすること
  • 24bitフルカラー画像データの取得が可能なこと

デジタル化仕様書の全体版はこちら

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当社では様々な資料とご要望に対応できるハイスペックな機材を数多く取り揃えています。
多種多様な資料でも、社内における一気通貫生産体制によってワンストップで対応できます。

③画像検査

デジタル化作業は多くの工程を人の手で行わざるを得ないため、作製されるデジタル画像に間違いが出る可能性があります。作業者が画像データのエラーやミスを検出できるように、検査の要領を仕様書に示します。主な検査項目は次のとおりです。
 
・スキャニング漏れ
・文字及び絵図等の判読性(綴じ部分などで文字が隠れてしまっていないか等)
・文字の向き
・画像欠け
・画像傾き(原資料に対して2%未満の傾き)
・モアレ、ピンボケ、ゴミ汚れ、うねり、変形等がないこと
・その他文字、色の再現性に問題のある事象が出ていないか。
 
当社では独立した検査部門を設け、人の目と専用ツールによるダブルチェックでデジタル画像の品質を保ちます。目視による資料とデジタル画像の照合や、目視では困難な画像に生じたノイズを検出し発生パターンを分析するノイズチェックツール、ピント不良の度合いを数値化し客観的に判断できるツールなど、様々な専用のデジタル検査ツールにより画像検査を行い、デジタル画像の品質を保つように努めております。

④編集

作成した画像ファイルにファイル名を付ける作業(リネーム作業)や、必要に応じてOCR(光学式文字認識)処理の要領などについて記述します。また画像フォーマットについても仕様書内で指定する必要があります。最適な画像フォーマットは、画像データの使用目的や保存方法、圧縮形式によって異なります。データ容量も加味しながら最適な画像フォーマットを選定して記述しましょう。

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3.その他

デジタル化作業には想定していなかったようなイレギュラーが発生することがあります。あらかじめ全てのイレギュラーを想定して仕様書に記載することは困難です。特に外部に委託する際には、こうした不測の事態に対する取り決めについても仕様書に記載しておく必要があります。作業中に想定外の事象が生じた場合には速やかに発注者に報告をした上、受発注者で協議を行い誠意ある対応で解決を図ります。仕様書の最後にはこうしたイレギュラーな事象に対する取り決めを記載するとよいでしょう。


まとめ

今回は、資料のデジタル化における仕様書の役割と作成方法について解説しました。仕様書はデジタル化プロジェクトの成功に不可欠な要素であり、関係者の理解と協力を深めるために重要な役割を担います。適切に作成・活用することで、より円滑なデジタル化プロジェクトの推進が可能になりますので、これからデジタル化を進める方は、ぜひこちらを参考に作成してみてください。


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