
図書館のマイクロフィルムから酢酸臭がする?劣化の原因とデジタル化の手順を解説
図書館の閲覧室や書庫で保管している地域資料などの貴重なマイクロフィルムから、酸っぱい臭い(酢酸臭)がすることはないでしょうか。それは「ビネガーシンドローム」と呼ばれる、フィルムの深刻な劣化が始まっているサインです。
また、2025年12月の最終オーダーをもってマイクロフィルム感材の供給が終了し、今後のマイクロフィルムの運用をどうすべきか、多くの図書館担当者が頭を悩ませています。
この記事では、マイクロフィルムの劣化原因や放置することによるリスク、2025年の感材販売終了による影響を踏まえ、図書館が今取り組むべきデジタル化の進め方を解説します。
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図書館のマイクロフィルムが劣化する原因「ビネガーシンドローム」
閲覧室や書庫にある古いマイクロフィルムの劣化は、主に材質の特性と湿度などの保管環境が原因で引き起こされます。特に1990年代前半まで主流として使われていたTACベースフィルムを所蔵している場合は、早急な状態確認が必要です。
お酢のような臭いや変形など劣化のサイン
過去に多く使用されていたTAC(トリアセチルセルロース)ベースのフィルムは、空気中の水分と反応して加水分解を起こし、内部から酢酸を発生させます。これをビネガーシンドロームと呼びます。
劣化が進行すると、お酢のような酸っぱい臭いが漂い始めます。さらに症状が進むと、フィルムが湾曲して波打つほか、ベタつきや白い粉(可塑剤の結晶化)が生じます。最終的には枯れ葉のように崩壊し、記録されていた画像情報が完全に失われてしまうおそれがあります。
▼枯れ葉のように崩壊したマイクロフィルム

放置による周囲の資料や設備への二次被害リスク
ビネガーシンドロームの恐ろしい点は、その被害が1本のフィルムにとどまらないことです。
発生した酢酸ガスは酸性の気体であるため、同じ空間に保管されているほかの正常なフィルムにも酢酸物質がうつり連鎖的に劣化を起こしてしまうこと、貴重な紙資料に臭いがうつってしまうなどさまざまなリスクがあります。
それだけでなく、充満した酢酸ガスによって保管場所の空調機器を故障させてしまうなど、設備面へも深刻な悪影響を及ぼす可能性があります。
そのため、極度の酢酸臭がするフィルムがある場合は別置保管するなどし、ほかの正常なフィルムや貴重な紙資料から隔離することが推奨されます。
マイクロフィルム感材の供給終了に伴い図書館が直面する課題
製造メーカーによるマイクロフィルム感材の供給終了により、これまでのように「TACベースフィルムが劣化したらPETベースフィルムに複製して保管やデジタル化を行う」という運用が不可能になります。所蔵しているフィルムの現状を正しく把握し、次の保管・利活用手段へ舵を切ることが求められています。
新規撮影や既存フィルムの複製ができなくなる
富士フイルム株式会社は、マイクロフィルム感材について2025年12月、その処理薬品について2026年3月を最終受注として供給を終了することを公式発表しました。
これにより、今後の新規撮影や、劣化が始まったTACベースフィルムから長期保管に適したPETベースフィルムへの複製が実質的に実施できなくなります。現状、代替となるフィルムが存在しないため、今あるフィルムをどう維持・活用していくかが大きな課題です。
全数棚卸しによる劣化調査と優先順位づけの緊急性
まずは館内で保管しているマイクロフィルムの棚卸しを行い、タイトルや作成年、素材の種別(TACかPETか)などを整理します。TACかPETかは外観だけでは判別が難しいため、必要に応じて専用の判定器や専門業者による確認を行いましょう。
TACベースフィルムを中心に劣化調査を行い、唯一無二の貴重な資料などのなかから、早急にデジタル化すべき資料の優先順位を決定する必要があります。調査は専門業者に依頼することで、より正確な状態把握が可能です。
▼専門業者によるフィルム調査の様子

マイクロフィルムはデジタル化による保管・活用が有効
今後、マイクロフィルムへの対応としては、「デジタル化による保管・活用」が主な選択肢となります。
劣化が進んだマイクロフィルムは、元の状態に戻すことはできず劣化の進行を止めることもできません。そのため、資料を将来にわたって保管・活用するには、劣化が深刻化する前にデジタル化を行い、閲覧や管理をデジタルデータへ移行することが有効です。
まずは所蔵マイクロフィルムの現状を調査し、長期保管の優先度が高いものからデジタル化を進めましょう。フィルムの劣化が進行してしまうと、デジタル化が困難となってしまう可能性があります。
マイクロフィルムのデジタル化には、以下のようなメリットがあります。
- 高精細なデータとして保管できる
マイクロフィルムを専用スキャナーで高精細な画像データ(TIFFやPDFなど)として保管します。
長期保管につながる
デジタル化によって原資料やマイクロフィルムへの接触機会を減らし、資料の長期保管につなげられます。検索・閲覧環境を整備できる
デジタルアーカイブとして公開することで、閲覧機器に依存せずパソコンやスマートフォンなどから手軽に検索や閲覧ができる環境を整備できます。資料の活用価値を高められる
地域資料など貴重な資料の活用機会が広がり、地域の知的資産として継続的に利用できます。
地域資料など貴重な資料を後世に残すデジタル化の手順
予算や手間の面で貴重資料やマイクロフィルムのデジタル化を躊躇してしまう図書館も少なくありませんが、正しいステップを踏めば無理なく実行することが可能です。公的機関などが発行しているガイドラインなどを基準にしながら、館の規模に見合った計画を策定することが成功の鍵となります。
①目的の明確化と対象資料の選定
まずは「どのような利用者層に向けて」「どの資料を公開・管理するか」という目的や効果(出口戦略)を明確にし、著作権のクリアランスなどを確認します。
所蔵資料の特性、劣化状況、利用ニーズを総合的に勘案し、すべての資料を一時的に処理するのではなく、優先順位に基づいて対象を絞り込むことが大切です。資料の重要度や利用頻度を整理すると分かりやすくなります。
②適切なスキャニング作業とメタデータの作成
冊子体の貴重な資料や劣化のある資料は、上から非接触で撮影できるオーバーヘッド型スキャナーなどを使用し、安全かつ同一条件で画像データ化を行います。マイクロフィルムの場合は専用のフィルムスキャナーを使用します。
また、検索を可能にするため、資料のタイトル・年代・内容サマリーなどの「メタデータ(属性情報)」を付与し、画像データと適切に紐づけて一元管理できる状態を整えます。メタデータの充実度が、デジタルアーカイブの使いやすさに直結します。
③予算やリソースに合わせた公開システムの導入
デジタル化データの公開・閲覧システムの導入において、サーバーの新規構築や専門人材の確保が大きなハードルとなる場合は、手軽に導入できる既製の公開システムが有効です。
最初は公開するコンテンツを限定し、小さく始めることでコストを抑え、必要に応じて拡大していくことも一つの手です。
当社ではデータやメタデータをご自身で整備してWebサーバーにアップロードするだけで手軽にWeb公開できるクラウド型システム『ふみかごSearch2.0』をご用意しています。
まとめ
この記事では、図書館のマイクロフィルムの劣化原因とデジタル化の手順について解説しました。
図書館のマイクロフィルムが劣化する原因「ビネガーシンドローム」
マイクロフィルム感材の供給終了に伴い図書館が直面する課題
マイクロフィルムはデジタル化による保管・活用が有効
地域資料など貴重な資料を後世に残すデジタル化の手順
図書館が所蔵する地域資料など貴重な資料のマイクロフィルムは、地域の歴史や人々の歩みを今に伝える、代えのきかない有形・無形の知的資産です。
ビネガーシンドロームによる劣化の進行や、2025年12月の感材供給終了という大きな転換期を迎えている今こそ、これまでの保管体制を見直し、デジタル化へ舵を切る重要なタイミングといえます。
「何から手をつければよいか分からない」「予算や手間に課題がある」という場合でも、現在のフィルムの状態調査や実行計画の策定、スモールスタートでのシステム導入など、専門的なノウハウを持つ外部の委託パートナーへ早期に相談や連携をしながら進めることで、確実にプロジェクトを成功へ導くことができます。
『デジアカ』では、官公庁・自治体・図書館・民間企業などで所有される貴重資料などのデジタル化をサポートしております。資料の整理からデジタル化、公開までワンストップでの支援が可能です。まずは一度、所蔵資料の状況についてご確認いただき、お気軽にお問い合わせください。















