デジタルアーカイブの利活用事例! 種類やデザインの特徴とは?
デジタルアーカイブは、官公庁・自治体・図書館・民間企業などが保有する公文書や貴重書、文化財などの資料をデジタル化して、共有・公開する仕組みのことです。
有形・無形の情報資産を一つに集約することで、一般ユーザーや研究者、自治体または企業担当者などによる、多種多様な情報の利活用が促進されると期待されています。
ただし、デジタル化するコンテンツの対象や検索機能の仕様、システムのデザインなどは活用分野によって異なります。「デジタルアーカイブにはどのような種類があるのか知りたい」「事例を知って活用に役立てたい」とお考えの方もいるのではないでしょうか。
この記事では、デジタルアーカイブの一般的な種類とその特徴、導入事例について解説します。
目次[非表示]
デジタルアーカイブの種類とデザインの特徴
デジタルアーカイブは、主に2つの種類に分けられます。ここでは、種類とデザインの特徴について解説します。
①一般公開
一般公開向けのデジタルアーカイブとは、インターネット上に資料などを公開・発信して、多くの人が閲覧できるようにする形態です。主に、図書館・博物館・美術館などの文化的施設で活用されています。
時間や場所を気にせずに、自由に資料を閲覧したり、印刷またはダウンロードしたりできることが特徴です。また、印刷やダウンロードは、場合によって制限することもできます。
一般ユーザーの利用を想定しているため、専門知識がなくても検索しやすいような検索画面に工夫することが必要となります。
▼デザイン例
- 情報を大・中・小に分類して、ニーズに合わせて選択できるようにする
- 年代・国・地域別の絞り込み機能をつける
- フリーワードでの検索機能をつける
- 画像閲覧画面における拡大・縮小や回転機能を設ける
- 資料を分かりやすく解説した追加説明を記載する
②企業や研究分野での限定使用
企業内や研究分野などでは、関係者が限定的にアクセスできるデジタルアーカイブを構築することもあります。
主に会社に関する歴史資料や技術者の作業映像、社内行事の写真や映像資料といった歴史的・学術的な資料などをデジタルアーカイブとして残すことが一般的です。
デジタルアーカイブ化にあたって資料の整合性を確認することで、カテゴリを整理したり、不備を修正したりできるといった副次的なメリットもあります。
企業や研究分野で活用されるデジタルアーカイブでは、検索性を確保するとともに、データのダウンロード、二次利用がしやすくなる工夫も必要です。
▼デザイン例
- コンテンツ情報を収集しやすいようにサムネイル・プレビューを表示する
- 内容を理解しやすいキャプションをつける
- ドラッグ&ドロップでのファイル登録機能を設ける
- 資料の二次利用がしやすい別名保存機能を設ける
デジタルアーカイブの4つの導入事例
デジタルアーカイブは、自治体や民間企業などの幅広い分野で導入されています。ここでは、4つの導入事例を紹介します。
日本水路協会さまの事例|一般公開
海洋調査に関する技術の開発や水路測量、水路図誌の刊行などを行う日本水路協会さまでは、海上保安庁海洋情報部が保有している資料を一般公開するために、デジタルアーカイブを構築しています。
▼一覧表示画面での検索結果
▼目的
明治初頭から所蔵している歴史的に価値のある海図資料を一般公開して、人々に海洋に関する理解を深めてもらうことが目的でした。
▼施策
- 資料の調査と目録の整備
- 他機関における所持資料の借用・出張撮影
- 特殊スキャナーによる高精細スキャニングで大判資料を画像データ化
▼構築したデジタルアーカイブシステムと効果
約15,000点に及ぶ資料を電子化して、デジタルアーカイブを構築することで、歴史資料の一般公開と電子データによって制作されたレプリカの展示を実現しました。
構築したシステムの機能や特徴は、以下のとおりです。
- タッチパネル方式を採用して、フリーキーワード検索やカテゴリ選択に加えて、地図上からの海域選択ができる機能の構築
- データ公開・非公開や追加・更新を行える管理者向けシステムの実装
- 大判資料の閲覧可能なビュアーの搭載
展示会では、世界図の高精細なスキャニングデータを印刷して床に張りつけることによって、世界観の演出にも活用しています。
あきる野市中央図書館さまの事例|一般公開
あきる野市中央図書館さまでは、市に関する歴史資料を世代にわたって伝えるために、図書館が行う情報提供の一環としてデジタルアーカイブを構築しています。
▼デジタルアーカイブのトップ画面
▼目的
市に関する歴史や情報をいつでも収集できるようにして、興味を持ってもらうことを目的としていました。また、知識を深めるために図書館を利用してもらいたいという思いもありました。
▼施策
- 歴史資料や過去にボランティアが撮影した写真のデジタルデータ化
- 市に関する新聞記事や五日市憲法草案を含む“深沢家文書”のデータベース化
- 劣化の激しい資料原本の貴重書庫への保管
▼構築したデジタルアーカイブシステムと効果
検索しやすいデジタルアーカイブの構築によって、情報収集の効率化と利便性の向上につなげられています。
- 分類別選択肢・年代別検索・フリーキーワード検索などの細かな検索機能の実装
- 新聞記事のタイトルを用いた検索と目録データの公開
東京上海日動火災保険株式会社さま|企業内限定公開
東京上海日動火災保険株式会社さまでは、経営企画部図書室において、会社に関する歴史的資料のデジタルアーカイブを構築しています。
▼ビューワーでのページ表示例
▼目的
歴史資料の有効活用や社外へのサービス提供のために、資料を効率的に利用できる環境を整備することを目的としていました。
▼施策
- DVD化した画像データをハードディスクに集約
- 画像とメタデータの紐づけ
- 画像データのフォルダ分類の整理
- スタンドアロン型データベースシステムの導入
▼構築したデジタルアーカイブシステムと効果
社内で管理していた資料を集約することで、データの検索スピードと情報収集の正確性が向上しました。
また、任意のファイル形式での保存やマスキングができる機能を実装することで、必要に応じてデータの二次加工を行えるようになり、分かりやすい資料提供を実現しました。
小金井市さま|自治体内限定公開
小金井市さまでは、自治体の行事や風景などを記録した広報写真を有効活用するために、デジタルアーカイブを構築しています。
▼ドラッグ&ドロップによる写真登録
▼目的
広報記録写真をデジタル化して、自治体広報のサービスレベルの向上を目指しました。また、目的の写真を探しやすくすることで、検索パフォーマンスの向上と、写真提供手順の効率化を図りました。
▼施策
- 検索やソートがしやすいように全角半角に入力されていた日付を統一する
- 部分一致検索機能を導入により、以前は複数あった検索キーワード項目を1ヵ所に集約して、入力画面を簡略化する
- 不備のあった文化財データ項目を再検討する
▼構築したデジタルアーカイブシステムと効果
直感的な操作と豊富な検索機能を備えることで、目的の写真が探しやすくなり、業務の効率化やサービスの向上を実現しました。
- ドラッグ&ドロップによる写真データの登録機能
- 二次加工や写真提供をスムーズに行える別名保存機能
- フォルダ検索・全項目キーワード検索・詳細検索など検索機能
まとめ
この記事では、デジタルアーカイブの利活用事例について、以下の内容を解説しました。
- デジタルアーカイブの種類とデザインの特徴
- デジタルアーカイブの導入事例
あらゆる企業・組織で導入されているデジタルアーカイブは、目的やデジタル化するコンテンツなどによってさまざまな種類・仕様があります。構築する際は、ユーザーによる情報検索や操作がしやすいようにすることが重要です。
『デジアカ』では、所蔵資料や貴重書のデジタルアーカイブ構築サービスを提供しております。官公庁・自治体・図書館・民間企業で所有される貴重書や資料、マイクロフィルムのデジタル化について、ワンストップで支援いたします。
デジアカの詳しいサービス内容は、こちらの資料をご確認ください。
なお、デジタルアーカイブの作成手順についてはこちらの記事で解説しています。併せてご確認ください。