マイクロフィルム劣化調査のポイント! TACとPETの見分けかた
マイクロフィルムを長期保管するため、または劣化が気になるマイクロフィルムの複製やデジタル化を検討する際に、まずは現状を把握する調査(劣化調査)を行うことが重要です。
別記事でも劣化調査の重要性について書かせていただきました。
この記事では、実際に劣化調査を行うときにポイントとなる、TACベースフィルムとPETベースフィルムの見分けかたについてご紹介いたします。
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なぜTACベースとPETベースを判別する必要がある?
マイクロフィルムの素材(ベース)は、主にNCベース(ニトロセルロース)・TACベース(三酢酸セルロース)・PETベース(ポリエチレンテレフタレート)に分けられます。
このうち、NCベースは可燃性フィルムであり昭和30年代以前に使われていました。NCベースのフィルムについては、その後誕生したTACベースフィルムに置きかわったため、今ではほとんどみることは無くなりました。もしNCベースのフィルムをお持ちの場合は可燃性フィルム(発火の危険性あり!)のため取り扱いには十分注意する必要があります。
一般的にマイクロフィルムの劣化として多くみられるのは、ロールフィルムのTACベースフィルムにおける劣化現象で、俗にいうビネガーシンドロームです。
TACベースフィルムにおけるビネガーシンドロームが問題となったため、1990年代初頭より国内で流通するマイクロフィルムはPETベースフィルムに置きかわりました。
現存するマイクロフィルムのほとんどは、TACベースフィルムまたはPETベースフィルムのどちらかであり、PETベースフィルムであればビネガーシンドロームは起こらないため、早急に媒体変換などの劣化対策を行う必要はありません。
一方、TACベースフィルムの場合はビネガーシンドロームの進行状況により媒体変換など早急な対策を行う必要があります。
そのため、マイクロフィルムの劣化調査では、まずTACベースとPETベースを判別することが重要となります。PETベースフィルムであれば詳細な劣化度を確認する必要はないため調査対象から除外することができ、そのぶんTACベースフィルムの調査に注力することができることになります。
そこで、TACベースとPETベースを誰でも簡単に見分ける方法についてご紹介します。
TACとPETの見分けかた
【①光を透すか透さないか】
TACとPETはそれぞれ次の特性があります。
TAC⇒光を透さない
PET⇒光を透す
そのため、ロールフィルムであればフィルムの側面に光をあてて、光を透さないフィルムであればTACベース、光を透すフィルムであればPETベースと判別することができます。
ただ、まれに光を透しやすいTACベースも存在するため、この方法ではっきりと判別できないフィルムも存在します。
また、穴が空いていないリールなどではこの方法で判別できないため、当社では偏光フィルターを使用した「TAC/PET判定器」も使用して判別をしています。
【②フィルムを指で裂くことができるかできないか】おススメ!!
TACとPETには光の透過性のほかに次の特性があります。
TAC⇒指で簡単に裂くことができる
PET⇒どうがんばっても指で裂くことはできない
ロールフィルムの先頭(画像のない部分)を少しだけハサミでカットし、指でちぎってみます。TACベースフィルムの場合、おどろくほど簡単にスパッとちぎることができます。一方、PETベースフィルムの場合はどんなにがんばっても指でちぎることはできません。
この方法が最も確実にTACとPETを判別する方法であると言えます。
【③その他の判別方法】
マイクロフィルムが製作された年代からTACとPETを判別することも可能です。
1990年代初頭に国内で流通するマイクロフィルムの素材がTACベースからPETベースに切り替わりましたので、おおよそ1990年代後半以降に作られたマイクロフィルムはPETベースフィルムである可能性が高く、1990年以前に作られたマイクロフィルムはTACベースフィルムであると言えます。
ただし、はっきりとした年月による区切りがあるわけではないため、あまりおススメできる判別方法ではありません。
もうひとつの方法として、フィルムの巻き返しの音の違いを聞き分けて判別することもあります。
劣化調査を何回も何本も行っていくうちに、TACとPETで巻き返しの音が微妙に異なることに気づきます。
ただ、ある程度劣化調査を経験した人でしか違いがわからない方法であるので、これもおススメの方法とは言えません。
他の判別方法で判断が付かない場合に補助的な判別要素として取り入れることはあります。
まとめ
今回の記事ではマイクロフィルムの劣化調査におけるTACベースフィルムとPETベースフィルムの見分けかたについてご紹介しました。
マイクロフィルムの劣化調査を行いたいけれど、どのようなことをチェックすればよいかわからない方、調査に自身のない方、デジアカでは劣化マイクロフィルム救済対策としてみなさまのお困りごとを解決する取り込みを行っています。
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