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電子メディアとマイクロフィルムのメリットを比較検証

様々なメディアが流通し、使用されていますが、
メディアにはそれぞれメリットとデメリット、得意・不得意があります。
今回は電子メディアとマイクロフィルムに焦点を当て、
「保存性」「利便性」「安全性」の観点で比較検証してみたいと思います。


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目次[非表示]

  1. 保存性
  2. 利便性
    1. 検索性
    2. 共有性
    3. 二次利用
  3. 安全性
    1. 改ざんリスク
    2. 法的証拠能力
    3. 情報漏洩リスク
    4. 災害時のリスク
  4. まとめ


保存性

まずは保存性という観点です。
保存性には耐久性や期待寿命といった意味合いも含んでいます。
 
電子メディアにおいてまずハードディスクドライブ(以下、HDD)は、
熱や外的衝撃に弱く、故障予測が困難という特徴があります。
 
寿命については個体差がありますが、
時間換算で約26,000~35,000時間程度とされており、
これを年に換算すると3年~4年程度です。
 
サーバーに使用しているHDDは温湿度管理とともに、
当然のことながら冗長的なバックアップによるフォローも必要です。
また劣化の進行具合やダメージを肉眼で判断することはできないため、
ある日突然ファイルが開けないといった事態に陥ることも考えられます。
 
次は電子メディアにおける光ディスクです。
光ディスクの寿命は、
メディア自体の品質や、書き込み用のドライブ装置などに影響を受けやすいという特徴があります。
また高温多湿に弱く、良質な環境で保管しないと、
寿命の短縮が加速化する恐れがあります。
 
このあたりはJIS Z 6017:2013「光ディスクの保存環境」に定められています。
期待寿命はこちらも個体差はありますが良質な環境下で20年程度。
ただ近年では長期保存に適したメディアも流通しており、
期待寿命100年以上と謳っている製品もあります。
こちらはHDD同様、外観では劣化の進行具合は判断できません。
 
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つづいてマイクロフィルムについてです。
マイクロフィルムの素材は、
「TACベース」のフィルムと「PETベース」のフィルムに分かれています。
両者の大きな違いは、
TACベースは劣化する可能性があり、PETベースは劣化する可能性が極めて少ないという点です。

「TACベース」と「PETベース」についてはこちら

  マイクロフィルム劣化調査のポイント! TACとPETの見分けかた この記事では、マイクロフィルムの劣化調査を行うときにポイントとなる、TACベースフィルムとPETベースフィルムの見分けかたについてご紹介いたします。 デジアカ


TACベースのマイクロフィルムは、加水分解や可塑剤の析出などが原因で劣化が進行する可能性があるため、
期待寿命は30年程度されている一方、
PETベースのマイクロフィルムは永久保存に適した素材で、
期待寿命は500年以上とされています。
外傷に関しても大きな衝撃が加わったとしても、
多少の傷が付くことはありますが、
中の情報が読めなくなる程の事態に陥る可能性は低いと考えらえます。

ここまで記した各媒体の保存性をまとめて評価すると、
保存性という観点ではPETベースのマイクロフィルムが最も評価できるといえます。
 
光ディスクも優れた製品になると100年以上の寿命が期待できる一方、
ディスクを読み取り用のハードに入れてみないと、
ファイルが開くかどうかなどの判断を外観のみではできないため、
保管環境には十分に留意する必要があります。


利便性

閲覧したい情報にアクセスするまでに、
検索にかかる手順やスピードがどのように違うかを比較します。

検索性

検索性とは情報の探しやすさです。
電子メディアの場合、ネットワーク上のサーバーの中にHDDがあれば、
フォルダー名からツリーで辿り、ファイル名からアクセスしたり、
あるいはキーワードで検索し、フォルダー名やファイル名、
全文からヒットさせてアクセスするなどの方法が可能になります。
 
一方マイクロフィルムは、
まず自分がアクセスしたい情報が収録されているマイクロフィルムを捜索します。
そのマイクフィルムをピックアップしたら、
次にリーダーと言われるマイクロフィルムを閲覧する機械があるところまで、
移動する必要があります。
そしてマイクロフィルムをリーダーに装填し、
そのマイクロフィルムの中から自分が閲覧したい情報を特定しなければなりません。


1件あたりの検索にかかる時間の予測値は、
マイクロフィルムが5分程度、電子は15秒程度です。
こうしたことからも情報にアクセスするまでの手順は圧倒的に電子メディアの方が有利といえます。
さらに電子メディアに収録されている電子データを、
データベース化したり情報システムを活用することなどにより、
飛躍的に検索性が向上します。


共有性


物理的な距離があっても複数人で情報をシェアできるかということや、
同時利用が可能かという観点です。
 
電子メディアの場合、ネットワーク上のサーバーの中にHDDがあれば、
物理的な距離は関係なく、複数の人が端末で情報を共有することができます。
また共有したい情報を、ネットワークを介して送ることもできます。
 
マイクロフィルムの場合は先述のとおり、
マイクロフィルムが保管されている場所、
そしてリーダーが置かれている場所まで移動しなければなりません。
したがって情報を共有したい場合や同時に利用したい場合は、
共有対象の全員がそのリーダーの前に集まるか、
そうでなければ、やはりマイクロフィルムを電子化してシェアするほかありません。
 
共有性の面でも電子メディアが有利といえます。


二次利用

電子メディアの場合、
編集、加工、分析、再抽出などがしやすく、
二次利用に適しています。
 
一方マイクロフィルムはアナログ媒体であり、
中に移っている情報を編集や加工、改ざんなどはできません。
これは後述する法的証拠能力の観点では有利ですが、
二次利用という観点では電子メディアに比べ劣ることになります。
 
これらのことから利便性の観点では電子メディア(ファイル)が優位と考えられ、
生産性や業務効率の観点で考えると、
使用頻度が高い、あるいは共有の価値がある文書や資料は、
電子化することが効果的といえます。

安全性

次に安全性という観点で比較してみたいと思います。


改ざんリスク

マイクロフィルムは、写真撮影によりアナログ情報のため、
改ざんも改ざんの痕跡を消すことも不可能です。
電子ファイルに付与する電子署名やタイムスタンプなどの対策がありますが、
電子ファイルの場合は、改ざんが100%不可能とは言い切れないと考えられます。

法的証拠能力

記録物の証拠能力は、裁判官の「心証主義」に基づくものですが、
マイクロフィルムが原本として証拠採用された判例は複数あります。
一方電子については、e文書法の施行により各種法令の規制は緩和されていますが、
電子メディア(ファイル)が証拠採用された判例はまだ限定的です。

情報漏洩リスク

マイクロフィルムはアナログ媒体であるため、
現物を紛失あるいは盗まれたりといったことを除くと、
情報漏洩リスクは限定的です。
一方電子メディアの場合、
特にネットワーク化にあればウイルスなどの不正プログラムの脅威や盗聴、
メールの誤送信などがありますし、
データのコピーも容易なことからも、情報漏洩のリスクはマイクロフィルムに比べて比較的高いと言えます。
 
なお東京商工リサーチの調べによる、
原因別の情報漏えい・紛失事故件数において、
情報漏洩の原因として圧倒的に多いのは、
ウイルス感染や不正アクセスということです。


災害時のリスク

マイクロフィルムは可視媒体のため、最悪の場合はルーペなどを使用して情報を閲覧することが可能です。事業継続計画の一環として、緊急事態に遭遇した際に早期復旧を可能とする対策のひとつです。
電子メディアは落下や水没に遭っても、ディスクが変形したり致命的な傷が付かない限り、データを読み出せる可能性が高い一方で、読み取るためのハードは必要なため、災害時に即時閲覧できるかどうかは状況によって異なります。
 
以上のことから、
安全性については、どちら媒体に対しても一定の対策が必要となる一方、
訴訟対応などが想定される文書は紙、マイクロフィルムでの保存が安全と考えられます。

まとめ

電子メディアにもマイクロフィルムにも強みや利点があります。

活用を重視する場合は電子、保存を重視する場合はマイクロフィルムとするといった、
それぞれの強みや利点をいかした情報管理体制を構築しましょう。


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