施設内で資料のデジタル化を行う際に用意が必要な設備とは?
資料を保管している施設内で資料のデジタル化を行う場合には様々な検討事項が出てきます。
検討事項が多岐にわたるため漏れがないよう慎重に検討を行わないと、安全なデジタル化作業の遂行に支障をきたしてしまうかもしれません。
今回は様々な検討事項の中で電源や照明、空調など施設側で整える必要のある「設備」について検討をしておくべきポイントをまとめました。
施設内で資料のデジタル化作業を行う場合、作業に必要な備品は委託業者さんが用意して持ち込むことになりますので作業備品について施設側で特別用意するものはありません。
しかし、デジタル化で使用する機器類を稼働させるために必要な電源や作業場所の照明などの「設備」は施設側で整える必要があります。
また、これらの設備は購入すればすぐに整うものが少ないため、事前に工事など必要な設備がないか確認、検討を行うことが重要となります。
資料のデジタル化作業に必要な「設備」とはどのようなものがあるのか確認してみましょう。
1.電源
デジタル化作業において電源が必要になる主な機器は以下の通りとなります。
1) スキャナーなどの画像取り込み装置及び制御PC
2) 検査作業用PC及びモニター
3) コピー及びプリント用複合機
それぞれの消費電力はそれほど大容量ではありませんので、使用されるスキャナーが数台等の規模で行うデジタル化作業では、事務室で使用している一般的な電源が用意できれば問題ないと思います。
しかし、デジタル化作業の規模が大きくなり、スキャナー等が大量に使用される事業の場合には、使用する台数全てが稼働しても電力的に問題ないか1台当たりの最大消費電力等を正確に把握しておくことが大切です。
また、スキャナーが問題なく稼働するコンセント口が必要になりますので併せて確認が必要となります。
デジタル化作業がある程度の規模で使用するスキャナー等が多くなる場合には、事前に委託業者さんに使用するスキャナーの消費電力が記載されているパンフレットなど正確な消費電力が記載された資料の提供してもらい、用意する電源の検討をしましょう。
2.照明
デジタル化作業ではスキャナー等に備わっている光源を使用することになりますが、適切な明るさについては作業場所に設備されている照明を調整して整えることになります。
基本的に画像データを取得するスキャナーが設置される場所と、スキャニングの前に行う資料の確認や取得した画像の検査を行う場所は求められる照明の明るさが異なります。
そのため、デジタル化作業を行う場所の照明については、区画別に照明の点灯/消灯の操作をできることが望ましいです。
また、資料の劣化要因の一つに紫外線がありますので、作業場所の照明に使用されている電球や蛍光灯から紫外線が出ている場合には、紫外線を発生させないLED照明に変更することや、紫外線を抑制するフィルムなどを照明機器に施す等の検討を行うようにしましょう。
3.空調
デジタル化作業を行う場所や実施時期によっては、作業に適した温湿度を施設の空調を使用して整える必要があります。
空調設備の無い作業場所で作業を行うことは、暑すぎるもしくは寒すぎるといった環境下で作業を行わざるえなくなります。そのような環境下ではデジタル化作業を行う作業の方たちが作業に集中することが難しく、安全な遂行に支障をきたす恐れがあります。
作業の方たちの健康面にも悪影響を及ぼす可能性も高くなりますので、作業者保護の側面からもデジタル化作業を行う場所には空調設備が必要になります。
デジタル化作業を行う場合の適した温湿度は、通常事務室などで設定している温湿度で問題ありませんが、デジタル化作業を行う場所はスキャナーや制御PCなど熱を発する機器が多くありますので、事務室で設定する温度より低くできる空調が整っていると望ましいです。
施設全体で温湿度が設定される場合には、デジタル化作業を行う場所のみ個別で空調設定ができるか確認をしておきましょう。
また、使用する空調設備について、エアコン等の吹き出し口から水滴が漏れてくることなどがありますので、実際にデジタル化作業を行う前に作業を行う時間及び複数日稼働してみましょう。
作業場所に一時保管されているデジタル化対象資料に、エアコンから落ちてきた水滴などが付着してしまいますと、資料保全上重大な事故につながる恐れがありますので気を付けましょう。
4.機材搬入に必要な設備等
デジタル化作業には様々な機器や作業備品が必要です。
画像を取得するためのスキャナー等、画像検査用のモニター、資料を作業場所に一時保管するための折りたたみコンテナ等収納備品やブックトラック、デジタル化前の資料確認作業備品、それぞれの作業用机、作業者用の椅子等々。
これらの機材は点数もさることながら、スキャナーや作業用テーブルなどサイズが大きい機材があります。
いざ委託業者さんが搬入しようとしたら大きすぎて入らないといった事象が起きないように事前に以下の事項について確認及び検討をしておきましょう。
1) 機材搬送車両用の駐車場
デジタル化作業の規模にもよりますが、デジタル化作業で使用する機材を搬送する車両のサイズは商用1t車(ワンボックスサイズ)や2t車両が主な車両になると思います。
これらの車両で作業機材を施設まで持ち込み搬入を行うことになりますが、作業機材を安全に円滑に施設内に搬入できるような駐車場を用意してあげることが重要です。
機材搬送車両の駐車場を検討するポイントは以下の通りです。
① 使用される車両の車種やサイズを事前に確認し、車両が入るサイズを用意する。施設敷地内に車両が入るゲートの幅も注意する。
※特に2t車両が使用される場合、コンテナ部分の高さ及びコンテナ部分の開閉に支障のない広さを確保する。
② 駐車区画に余裕がある場合には、搬送車両を駐車する周りの駐車区画は空けておく。
③ 屋根付きの駐車場や駐車スペースがあればベスト。(機材搬入時の天候を気にせず計画を立てることができます。)
④ 機材搬入口となるべく近い駐車場を用意する。
⑤委託業者さんに使用してもらう駐車場が決まったら、委託業者さんに駐車場に係る情報を早めに提供して使用に支障がないか確認してもらう。
2) 機材搬入用エレベーター
デジタル化作業に必要な機材を作業場所に搬入するためのエレベーターになります。(デジタル化作業場所が1階等エレベーターを使用しない場合には該当しません。)
施設に設備されているエレベーターが複数機あり荷物用が用意されている場合には、作業機材は荷物用のエレベーターを使用し、その他の場合には施設職員さんが利用するエレベーターを使用して作業機材を搬入します。
エレベーターは日常的に使用されているために、確認不足などがあると施設側の日常業務に支障がきたす場合があります。
作業機材搬入用エレベーターの検討するポイントは以下の通りです。
① 使用するエレベーターを特定して、可能であれば作業機材搬入時間内は搬入作業に占有できるようにする。占有できない場合には日常業務に影響が少ない時間に搬入作業を行う等時間の調整をする。またその結果を関係者に事前に周知する。
② エレベータードアの幅や高さ、かご内の広さを確認して委託業者さんに伝え、機材搬入に支障がないか確認してもらう。
③ エレベーター最大積載荷重を事前に確認し、委託業者さんに事前に伝え機材搬入に支障がないか確認してもらう。
④ 機材搬入に使用するエレベーターが荷物用ではない場合には、エレベーターのかご内に養生が必要か確認しておく。養生が必要な場合には委託業者さんにその旨を事前に伝えておく。
まとめ
今回は施設内でデジタル化作業を行う際の様々な検討事項の内、「設備」について検討ポイントをまとめてみました。
デジタル化作業において施設側で用意する「設備」は委託業さんがデジタル化作業を安全に行うために必要なものとなるため大切な要件となりますので、しっかりと検討や確認する必要があります。
これらの「設備」については対象資料、仕様、工期等により最終的には決まりますので、デジタル化作業を行う委託業者さんに施設側で用意する「設備」について、対象資料や仕様、工期などを伝えて、施設側で用意する「設備」と委託業者さんでデジタル化作業を安全に行うために必要な「設備」に乖離が無いか確認しておきましょう。
また、口頭やメールのみのやり取りでは共有できていない情報などが発生しやすいため、必ず委託業者さんに各設備を確認してもらいデジタル化作業を安全に行えるか判断してもらうようにしましょう 。