利活用されるデジタルアーカイブにするには?
デジタルアーカイブは利活用されているかで、その存在価値を問われます。いい資料を公開していても、2次利用ができなかったりしにくかったりすれば、利活用が進まないことになります。今回は2次利用のしやすさについて考えてみましょう。
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デジタルアーカイブの存在価値は利活用されてこそ
デジタルアーカイブは、あらゆる分野の知識や、文化・歴史的資源等の記録をデジタル技術で保存し後世に伝える役割や、教育・研究や、観光、地域活性化、防災などに利活用されることによってそれらの品質を高める役割を担っています。
特に後者の利活用は社会活動に大きく貢献できるため、デジタルアーカイブ構築の効果効用を外部にアピールすることができます。
デジタルアーカイブの利活用に大きく影響するのが、その画像やメタデータなどの2次利用です。2次利用がしやすいデジタルアーカイブであれば利活用は進みますし、2次利用がしづらいデジタルアーカイブであれば利活用されることはあまりありません。
それでは、利用する側はどんな風に2次利用を求めているのか、そしてデジタルアーカイブ提供者はどんな課題を抱えているのかを見ていきたいと思います。
利用者目線の事例:米国国立公文書館資料の2次利用に関する問い合わせ
デジタルアーカイブの利用者は、資料を自由に使いたい、あるいは煩雑な手続きなく使いたいと考えています。ここでは具体的に弊社に寄せられるお問い合わせを例としてあげてみたいと思います。
弊社ニチマイは、デジタルアーカイブの構築支援サービスを行っていますが、デジタルアーカイブの提供は行っていません。しかし、アメリカのニチマイ米国事務所では米国国立公文書館での資料収集を行ってるため、そこで収集した資料(デジタルデータを複製したもの)に関連してこんな質問を受けることがよくあります。
「デジタルデータの2次利用は可能なのか?」
デジタルデータの2次利用
前述したとおり弊社は米国国立公文書館において資料調査や収集サービスを行っていますが、そもそもの資料の所有者ではありません。従いまして、弊社にて当該資料の2次利用について判断することはありません。
その上で、米国国立公文書館のサイトにある2次利用に関する部分をご案内いたします。
米国国立公文書館のサイトには、資料の著作権について以下のように書かれていますので参考にしてくださいと説明しています。
そのサイトは以下のリンクからご覧になれます。
こちらのページの中の Copyright のところに利用方法が記載されています。
この記述によると公開されている資料の多くはパブリックドメインであり、その場合は情報源である米国国立公文書館を示してほしいとあります。また、中にはパブリックドメインでなく、著作権で保護された資料もあることがここでは述べられており、サイトカタログ上の「使用制限」を示してあるとのことです。
資料の多くがパブリックドメインであることが大きいと思いますが、とてもシンプルでわかりやすくなっています。これなら2次利用もされやすいのではないででしょうか。
また、ここには情報源を示すことが記載されていますが、できるだけ資料の詳細を示す情報を記載することも推奨されています。
ニチマイ米国事務所のサイトやブログにはたくさんの写真やドキュメントが公開されていますが、こちらのガイドラインに沿って資料の情報を記載しています。
以下のURLは弊社の米国事務所のブログ記事のURLとなります。参考にご覧になりたいかたはこちらからどうぞ
■ニチマイ米国事務所のURL
このように利用者目線で気になっていることをまとめますと以下のとおりとなります。
・デジタルアーカイブの画像やを使っていいのか
・使うとしたらどうすれば使えるのか
・それはどこかに明記されているのか
提供者の課題:デジタルアーカイブでの明確な2次利用表示
前述したとおり、デジタルアーカイブを提供する側は、利用を促進するためにはできる限りわかりやすく2次利用について提示する必要があります。
この2次利用表示については、既に課題として取り組まれているところも多いため、国立系などの規模の大きなデジタルアーカイブにおいては、対応されているところもどんどん増えてきています。
しかし、地域のデジタルアーカイブについては、2次利用条件について明確に書かれていなかったり、印刷やダウンロードを申込制にするところなどがまだまだ多いことが見受けられます。この申込制も、デジタルアーカイブの画面からシームレスに申し込めるのではなく、別途、PDFファイルの申請書をダウンロードして、それに書き込みを行いメールで送付する形式がまだまだあるようです。
提供者にとっては、資料を勝手な利用から守りたいという動機があり、利用までに1手間2手間あることでそのハードルも高くなり、牽制の意味もあってこのようなやり方とっていると思います。また、デジタルアーカイブを構築したときに、その運用を他地域のデジタルアーカイブの方針を参考にしてこの2次利用条件を決めることもあり、かつて多かった方法を採用するというケースもあるようです。
これらは確実な方法かもしれませんが、この方法は利用者の利便性を損ない、利活用の推進を妨げることにもなってしまいます。
利活用はデジタルアーカイブの将来を握っている
デジタルアーカイブの構築には費用がかかりますが、その継続にも費用がかかります。
利活用されることで社会にメリットをあると感じられ、その存続も支持されるようになります。つまり、利活用はデジタルアーカイブの存続にも繋がっているのです。
デジタルアーカイブの利活用で大きく効果を発揮するのは、教育分野です。
かつて
学校図書館で子ども達に本を提供するように、
調べ学習を図書館で行ったように、
デジタルアーカイブから資料を探して自分の意見をまとめて発表したりすることは、
知識の大きな海に泳ぐような楽しさがあります。
利活用しやすければ、海は広くなり泳いでいる魚も増えることでしょう。
しかしながら、利活用方法が明確に示されていなかったり、手続きが煩雑さあったり、直ぐに利用したいのに申請に時間がかかったりすれば、利活用が難しくなってしまいます。教育教材の1つに対する労力をなるべくかからないように協力することが求められます。
まとめ
デジタルアーカイブにおいて利活用を促進するためのポイントは、
・2次利用に関するページを作成し、方針などについてわかりやすい説明をする。
・使用に問題ないものは、CC0、CC BY などよく知られた表示で表す。
・申請手続きをできるだけ省く、あるいは、シンプルにする。
ということがあげられるのではないでしょうか。
※参考情報
■デジタルアーカイブにおける望ましい二次利用条件表示の在り方について( 2019 年版) デジタルアーカイブ戦略懇談会及びデジタルアーカイブ推進に関する検討会
■デジタルアーカイブ資料の活用を促進する二次利用条件のあり方 大井 将生、渡邉 英徳