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資料の防災・予防についてまとめてみました

資料のデジタル化を行うためには、当然デジタル化のもとになる資料が、デジタル化に耐えうる状態で現存している必要があります。

しかし、近年日本では豪雨や大雪、地震、火山の噴火など人命・財産に多大な影響を及ぼす自然災害が頻発しており、これらの自然災害の影響は大きく、長年にわたり大切に保管してきた資料も消失してしまう恐れがあります。

当たり前ですが、デジタル化したくても資料がなくてはお話になりません、、

そこで今回は今後デジタル化を行うためにも、資料を自然災害からどのように守るのか、自然災害に対する資料防災の「予防」についてまとめてみました。

目次[非表示]

  1. 1.資料を取り巻く環境で起こりうる災害や事故を考えてみる(リスクアセスメント)
    1. 1)資料を保管している施設の周辺にあるリスクを把握する
    2. 2)建物の構造、設備にあるリスクを把握する
  2. 2.予防
    1. 1)施設の点検・整備を行う
    2. 2)防災関連設備の充実・点検を行う
    3. 3)システムやデータのバックアップ
    4. 4)資料への対策
    5. 5)書架の備え
  3. まとめ
  4. 参考URL

日本は、位置,地形,地質,気象などの自然的条件から,台風,豪雨,豪雪,洪水,土砂災害,地震,津波,火山噴火などによる災害が発生しやすい国土となっています。

世界全体の面積に占める日本の国土面積はわずか0.25%にすぎませんが、世界全体に占める日本の災害発生割合は,マグニチュード6以上の地震回数20.8%,活火山数7.0%,死者数0.4%,災害被害額18.3%など,非常に高くなっています。

また、今後においては、南海トラフ地震や首都直下地震だけでなく、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震や中部圏・近畿圏直下地震など、大きな被害が想定される大規模災害の発生が懸念されています。

これら自然災害は人命・財産に多大な影響を及ぼし、当然のことながら長年大切に保管されてきた資料に対しても大きな脅威になります。

資料を災害から守る、災害からの被害を最小限にするための資料防災への取り組みは、災害の発生を防止し、災害が発生した際に被害をできるだけ抑えるための対策となる「予防」がとても重要となります。

今回は資料防災における「予防」についてまとめてみました。

1.資料を取り巻く環境で起こりうる災害や事故を考えてみる(リスクアセスメント)

資料が保管されている施設のあらゆる危険性又は有害性を洗い出し特定します。

1)資料を保管している施設の周辺にあるリスクを把握する

①施設の立地条件や周辺にある河川、海、山林等を把握し、河川の氾濫や津波、土砂災害などが発生した場合の危険性を調査、また危険度を評価します。

②施設のある地域の地盤や地形、気候なども把握しておくことが大切です。

③各都道府県、地方自治体が発行している洪水、津波、地震など自然災害の危険度を地図上に表し、災害時の避難・危険回避などをまとめたハザードマップを有効利用しましょう。

施設がどのような自然災害のリスクの中にあるのか、一目瞭然ですので施設の周辺にあるリスクを把握するために役に立つでしょう。

2)建物の構造、設備にあるリスクを把握する

①施設に設備されている書庫の状況、安全性を確認します。(地下書庫、高層階・最上階の書庫、窓際の書架)

②空調システム、給排水管、電気回路、ガス設備などの状況、設置位置及び安全性を確認します。

③PC端末・複写機、ストーブ・ポット等の機器・器具類が設備されている位置と安全性確認します。

④施設内にレストラン、カフェ、給湯室、喫煙所など火や水を使う場所がある場合には、消化設備や安全性を確認します。

⑤施設の築年数が古い施設については、施設の耐震性や耐久性、既に破損個所がある場合にはその位置と状況を確認します

2.予防

1)施設の点検・整備を行う

①建物について、壁面・天井・床のひび割れ・漏水跡はないか・排水溝は詰まっていないか等の点検を行い、災害の影響を受けやすい箇所がないか確認しましょう。

②設備について、配管の水漏れ、ガラスのひび割れはないか、また照明器具は固定されているか等の点検を行いましょう。

③書架について、書架の歪みや資料の配架方法に問題はないか、転倒防止策は施されているか、また転倒防止の器具等にゆるみが発生していなか等の点検を行いましょう。

2)防災関連設備の充実・点検を行う

施設内外に設備されている防災関連設備については、自動火災報知設備、消火設備、漏水感知装置、防煙垂れ壁、自家発電設備など様々な災害に対応できる設備を整備し、定期的に点検しましょう。

3)システムやデータのバックアップ

災害から物理的に資料が被害にあわなかったとしても、各種システムやデータが失われてしまうと、データの消失や復旧ができたとしても膨大な時間がかかってしまう場合があります。
そのため、各種システムのバックアップ、各種データ・管理データのバックアップを行っておきましょう。

4)資料への対策

紙の資料はデジタルデータと比較して、耐久性の高い記録媒体ではありますが、実際に災害にあってしまうと、破損・汚損・消失のリスクは避けられません。
これらのリスクを低減させるためには、様々な角度で対策を検討することが重要です。

①資料を保存容器に収納する

貴重な資料は保存容器に入れておくと、落下による破損や軽度な水濡れ等であれば浸水に対して有効な場合があります。
※資料を保存容器に入れた場合は、資料そのものを配架したサイズと資料を保存容器にいれた配架サイズが異なりますので注意が必要です。

②資料のメディア変換

災害における資料被災のリスク分散のためには、貴重な資料はデジタル化などのメディア変換により代替資料を確保し、そのうえで分散管理などをおこなうなど、一つのメディアが万が一被災しても資料の記録が継続できるような体制を検討しておきましょう

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5)書架の備え

①配架の工夫について、重い資料・大型資料は上段を避ける、貴重資料は下段に置かない、棚の奥側に引っ込めて配架する等災害が発生した場合に影響を受けにくい資料の配架をおこないましょう。また、配架が維持されているか定期的に配架状況を確認しましょう。

②資料の落下防止について、物理的な対策が有効ですので落下防止バー、落下防止シート、落下防止ひもなどで書架からの資料の落下を防ぎましょう。

③書架の転倒防止について、床・壁面への固定、書架背面の筋交い、書架同士の連結等を行いましょう。壁や床の素材がアンカー打ち込み等の転倒防止の施工に適さない場合もありますので、事前に確認をしておくことが大切です。

④書架周辺の備えについて、施設の窓ガラスや照明器具に対して飛散防止フィルムなどで割れてしまった際の飛散を防ぐ、また、照明器具の落下を防ぐ等の対策を行いましょう。

特に避難ルート上及び付近については、資料の落下や書架の転倒等によってふさがれることのないよう、必ず対策を講じましょう。
また、書架に収まりきらない資料を箱詰めして床に直置きしたり、防火扉を塞ぐ場所や避難ルート上に置かれていないか併せて確認しましょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

毎年必ずといっていいほど、日本のどこかで甚大な被害をもたらす自然災害が発生しています。

自然災害の難しいところは、どれほどの大きな災害になるのか事前に予測することが難しい点です。

気象に関する自然災害は観測及び予測技術が進歩してきており、ある程度事前に備えることができますが、地震や火山などはいつどこで発生するか事前に知ることは難しい状況です。

そのため、自然災害が発生したときに資料に対する被害を最小限に抑えることができるか、そのために取り組む資料防災における「予防」はとても大切になってきます。

自然災害が発生した際に第一に優先されるのは人命となりますが、長年大切に保管されてきた資料が消失しないような対策についても、災害が起きていない今のうちに検討をしておきましょう。

参考URL

・国立国会図書館 資料防災

https://www.ndl.go.jp/jp/preservation/collectioncare/disaster_p.html

・内閣府 防災情報のページ

https://www.bousai.go.jp/kaigirep/hakusho/h18/bousai2006/html/honmon/hm01010101.htm

Hasegawa
Hasegawa
ニチマイの営業担当です。デジタルアーカイブに関して少しでも皆様のお役に立てるようにがんばります!