catch-img

これからのマイクロフィルムの保存と活用について考える。

2026年3月をもって、マイクロフィルムおよび処理薬品の製品の販売は終了いたしました。
https://www.fujifilm.com/jp/ja/business/data-management/microfilm
(富士フイルム株式会社ホームページより該当ページ)
新たに撮影マイクロフィルムや複製マイクロフィルムを作製することは、もう出来なくなってきていまが、いままでに作製してきたマイクロフィルムは、これからも手元に残り続けることになります。
今回は、現在所有しているマイクロフィルムのこれからの保存と活用方法について考えみたいと思います。

状態の確認作業

まず初めに、現在所有しているマイクロフィルムの状態を把握しましょう。目視によるフィルムの状態をチェックする作業を行います。

基本調査としてフィルム極性ネガ・ポジの確認、銀塩・ジアゾなどフィルム感材の確認、TAC・PETベースの確認を行います。あわせて状態のチェックも行いましょう。確認内容は、臭い・べた付・捻れ・変色についての有無になりまます。確認した結果、有と判断されたものについては、その度合いも記録することとします。ロールフィルムの場合は、リワインダーにセットして、初めから最後までフィルムの巻き返しをしながらチェックします。

TACベースにおける、臭いやべた付、捻れのあるフィルムについては、劣化度合いを明確にするため数値化することも可能です。

劣化度合い調査

TACベースにおける、臭いやべた付、捻れのあるフィルムは、加水分解で酢酸が生じている表れです。このような劣化症状が出ているフィルムは、ADストリップという試験紙を用いることで、劣化の度合いを判断することが可能です。

ADストリップでは、一定時間密封された状態で試験紙を酢酸に曝露させることで変色させて、「0」「1」「1.5」「2」「3」の5段階で判定します。「0」「1」良好、概ね良好とされ、「1.5」が急速な劣化の開始、「2」「3」不良、致命的とされています。

また推奨する保管方法や処置についての記載もあり、そのうち「2」「3」については、冷凍保管と複製を推奨しています。しかしマイクロフィルムの複製は、今後作製することができません。

A-D Strips・・・アメリカの写真資料保存の研究機関であるIPI(Image Permanence Institute)が開発した、フィルム資料の酸性劣化を測るための紙片

長期保存の検討

フィルムの状態や劣化度合いが分かったら、対策を検討する前に、まずは対象を検討しましょう。そのフィルムが機関の使命に基づいて保管すべき資料かどうか、自館や他の機関にオリジナル資料が存在するかどうかなどを確認します。利用頻度なども踏まえ、長期間保存に値するものかを総合的に検討することが大切です。

対策として現在考えられるのは、そのままフィルムで長期保存する手法と、デジタル化して媒体を変換してしまう手法になります。両者ともに対策を講じるには費用や労力を費やすことになりますので、劣化の度合いを含め、場合によっては廃棄することも考え対象を決めていきましょう。

令和元年に国立国会図書館より原則的な対策について、フローチャートで示されていますので参考になります。ここで示されている複製や再収集も、現在では対応が出来なくなってしまったことになります。

マイクロ資料状態調査結果に基づく原則的な対策フローチャート 国立国会図書館収集書誌部資料保存課(令和元年10月作成)
https://www.ndl.go.jp/file/preservation/collectioncare/care_micro/micro_chart.pdf

保管環境の整備

長期保存する対象が決まったら、保管環境の整備をしましょう。マイクフィルムの長期保存には、厳密な温湿度管理を行い、短時間における温湿度の反復変動を避けることも重要となります。

JIS Z 6009(銀-ゼラチンマイクロフィルムの処理及び保存方法)では、保存する環境条件として相対湿度と温度について表にて示されています。

※JIS Z 6009:1994(銀-ゼラチンマイクロフィルムの処理及び保存方法)より引用

フィルムの保存では、空調機や調湿器等を設置して、室内の温湿度をロガーを利用して一定時間ごとに記録し、定期的に点検することで温湿度管理に努めましょう。またキャビネット単位での乾燥剤、調湿剤を用いての湿度調節や吸着剤を用いての酢酸の吸着なども効果的です。

TACベースのフィルムでは、劣化度合いで分離・隔離した保管を行い、定期的にフィルムの状態確認し、保存箱等の包材交換も実施しましょう。

ニチマイでは、酢酸臭を吸着する「酢酸吸着シート」や、湿度調整機能付きマイクロフィルムキャビネットなど、マイクロフィルム長期保管に必要な商品を販売しております。

↓↓↓マイクロフィルムの関連商品のご案内はこちらから↓↓↓

デジタル化の検討

マイクロフィルムの保存方法の一つ、あるいは利活用の手段として、フィルムのデジタル化をご提案しています。

劣化していない正常なフィルムは、専用スキャナを使用してデジタル画像データの作製が可能です。デジタル化では、定期的なデータ移行やバックアップを強化することで長期保存が可能となると言われています。またデジタルアーカイブシステムでの公開・運用が可能となり、さまざまな利用用途が広がります。

劣化フィルムのデジタル化では、作業場所や機材、品質などの課題はありますが、これらが解決されることで作業が可能になると考えています。適切な保管環境で保管しながら、課題解決に向けて検討していくことが重要です。

まとめ

マイクロフィルムを作製することは、すでに難しくなってきています。しかし、いままでに作製してきたマイクロフィルムは、劣化の問題があるにしても、これからも保存して利活用につなげていける媒体であります。フィルムの状態を知り、保管環境を整えて、長期保存やデジタル化を進めていきましょう。

ニチマイでは、マイクロフィルムの調査、デジタル化、保管用品の販売など、マイクロフィルムに関する各種業務をサポートいたします。お困りごとなどありましたら、お気軽にご相談いただければ幸いです。

参考資料

マイクロフィルム保存のための基礎知識 国立国会図書館収集書誌部資料保存課(令和元年9月改訂版)
https://www.ndl.go.jp/file/preservation/collectioncare/care_micro/microfilm2019.pdf

Kurita
Kurita
デジタルアーカイブの夜明けに貢献できるよう努めて参ります。