
デジタル化する資料に優先順位をつけよう!
資料をデジタル化したいものの、何から始めるべきか迷うことはありませんか?今回は劣化状況や利用頻度などの観点から、デジタル化の優先順位を決める際に参考となる基準や、優先順位を決めるための手順をご紹介します。
何からデジタル化すべきか、迷うことはありませんか?
官公庁や自治体、図書館、博物館、大学、企業などでは、様々な貴重資料が保管されています。これらの資料を将来に残し、活用するために有効なのが資料のデジタル化です。デジタルデータを作成して利用できる環境を整えることにより、検索性や利便性の向上につながるとともに、原資料を取り扱う機会が減り、汚損や破損のリスクを抑えることができます。
しかし、保有する資料を一度に全てデジタル化することは、予算や人員、作業期間などの面から難しい場合があります。そのため、資料の状態や価値、活用方法などを整理し、デジタル化する優先順位を決めることが重要です。
次の章からは、貴重資料をデジタル化するときの優先順位の決め方と、それを決めるための手順について解説します。
なぜデジタル化の優先順位を決める必要があるのか?
貴重資料のデジタル化には、資料の事前調査から始まり、スキャニング(や撮影)、画像検査、ファイル名やメタデータの作成など、さまざまな作業が必要です。さらに資料の形状や保存状態によって、必要な機材や作業方法も異なります。一般的な冊子だけでなく、大型の地図や図面、折り目のある資料、変色・破損した文書、フィルム媒体などが含まれている場合、個別の対応が必要になることがあります。どのような資料があるかを把握しないままデジタル化を始めると、重要な資料が後回しになったり、途中で予算が不足したりする可能性があります。
そこで、次の3つの軸から優先順位を考えることがポイントです。
- 劣化の度合い
- デジタル化によってもたらされる効果
- 作業の実現可能性
単純に「古い資料から順番に進める」のではなく、複数の観点を組み合わせて判断する必要があります。
デジタル化の優先順位を決める6つの基準
この章では先に記した3つの軸から、デジタル化する優先順位を決めるための基準を6つに細分化し、ご紹介します。
1.劣化状況と保存の緊急性
最初に確認したいのが、資料の劣化状況です。紙の変色や脆弱化、カビ、虫損、破れ、インクの退色などが進んでいる資料は、時間の経過とともに内容を読み取れなくなるおそれがあります。また、フィルム媒体や録音・映像資料では、媒体の劣化だけでなく、再生機器が入手できなくなるリスクも考慮しなければなりません。
国立国会図書館も、資料の劣化状況や保存の緊急性を、デジタル化対象を選定する評価要素の一つとしています。閲覧・再生機器やデジタル化に必要な機器の入手が困難になる資料についても、優先的な対応が必要とされています。
国立国会図書館「資料デジタル化及びデジタル資料長期保存に係る基本計画 2026-2030」
ただし、著しく劣化した資料は、そのままスキャンすると破損する恐れがあります。必要に応じて、保存修復の専門家やデジタル化事業者に相談し、選別や補修などを行ってから作業することが大切です。
2.資料の唯一性・希少性
ほかの機関や媒体に同じ内容が残されているかどうかも、重要な判断基準です。例えば、唯一無二の手書きの記録や未公開の写真、企業における創業期に関する文書などは、失われると内容を復元できない可能性があります。一方で、同じ刊行物が複数部保存されている場合や、他の機関ですでにデジタルデータが公開されている場合には、自らでデジタル化する必要性が低いこともあります。複製や代替資料の有無を確認し、唯一性・希少性が高い資料を優先することで、限られた予算を有効に活用できます。
3.利用頻度と今後の活用ニーズ
現在の利用頻度だけでなく、デジタル化後にどのような活用が見込まれるかを検討します。
例えば、次のような資料は優先度が高いと考えられます。
- 閲覧申請や問い合わせが多い資料
- 展示会や周年事業で利用する予定の資料
- 学校教育や地域学習への活用が期待される資料
- 研究者からデジタル化の要望が寄せられている資料
- 社史編纂や企業ブランディングに活用できる資料
- 災害や地域の歴史を伝える資料
デジタル化することで利用機会の拡大が見込まれる資料や、社会的・学術的なニーズが高い資料も、優先順位を高くすることが考えられます。利用者へのアンケート、問い合わせ履歴の確認、関係部署へのヒアリングなどを行うと、潜在的なニーズも把握しやすくなります。
4.閲覧による原資料への負担
頻繁に利用される資料は、破損や紛失のリスクが高まります。特に、製本の綴じや紙力が弱くなっている冊子、折り畳まれた大型図面、薄い紙に記録された文書などは、慎重に取り扱っていても徐々に傷んだり破損する可能性があります。
利用頻度が高く、閲覧による負担が大きい資料をデジタル化することで、原資料を取り扱う回数を減らせます。デジタル化は利活用するための複製物ではなく、原資料を保存するための対策にもなります。
5.権利関係と公開の実現性
デジタル化とインターネット公開は、分けて考える必要があります。資料を保存目的でデジタル化できたとしても、著作権、肖像権、個人情報、寄贈時の条件などによって、公開できない場合があります。公開や外部提供を予定している場合には、事前に権利関係を確認しなければなりません。参考になる資料として、文化庁の著作権テキストがあります。
著作権テキストは文化庁著作権課が作成・公開している、著作権制度を基礎から学ぶための公式な解説教材です。現在、文化庁のウェブサイトでは「令和8年度著作権テキスト」が公開されています。
主に、次のような内容が説明されています。
著作物・著作者とは何か
著作者人格権と著作権(財産権)
複製権、公衆送信権、展示権などの権利
著作権の保護期間
著作権者の許諾が不要となる例外
写真、映画、音楽、出版物などの取扱い
著作隣接権や著作権法の改正内容
条文だけでは分かりにくい著作権法について、図表や具体例を交えて説明しているため、企業・学校・図書館・博物館・アーカイブ機関などが著作権の基本を確認する資料として利用できます。
6.作業効率と費用
優先順位を決める具体的な4つの手順
この章ではデジタル化する資料の優先順位を決めるために必要な手順についてご紹介します。
1.資料の全体像を把握する
まずは、どのような資料を、どの程度保有しているかを調査します。
資料名、年代、数量、サイズ、形状、材質、保存場所、劣化状況などの情報を、可能な限り一覧にします。この段階では、1点ずつ詳細に調査するのではなく、「古文書」「写真」「図面」「マイクロフィルム」のような資料群単位で整理しても問題ありません。粗めの粒度でも全体を把握することを優先にします。
2.評価項目を設定する
次に、組織の目的に合わせて評価項目を設定します。
例えば、次の項目を5段階で評価します。
- 劣化・消失の危険性
- 唯一性・希少性
- 利用頻度
- 社会的・学術的価値
- デジタル化後の活用可能性
- 権利処理の難易度
- 作業費用・難易度
点数だけで機械的に決めるのではなく、評価理由も併せて記録することが望まれます。
3.優先度を段階に分ける
評価結果を基に、資料を次のように分類します。
優先度A:早急にデジタル化する資料
劣化が進行している、唯一性が高い、近く利用予定があるなど、緊急性・重要性が高い資料
優先度B:計画的にデジタル化する資料
直ちに失われる危険性は低いものの、今後の利用や保存のためにデジタル化が必要な資料
優先度C:状態を確認しながら継続保存する資料
代替資料が存在する、利用ニーズが低いなど、現時点では優先度が低い資料
4.少量の資料で試行する
優先順位は定期的に見直す
資料の優先順位は、一度決めたら終わりではありません。時間の経過によって資料の劣化が進むほか、周年事業や展示会の開催、新たなニーズの発生などにより、資料の利用価値が変わることがあります。また、以前は難しかった資料でも、技術の進歩によってデジタル化が可能になる場合があります。年に一度など定期的に資料の状態と利用ニーズを確認し、デジタル化計画を更新することが望まれます。
まとめ
貴重資料をデジタル化する優先順位は、古さや知名度だけで決めるものではありません。
劣化状況や希少性、利用ニーズ、原資料への負担、権利関係、作業費用などを総合的に評価する必要があります。特に、「保存の緊急性」「デジタル化によって生まれる価値」「作業の実現可能性」の3つの軸で整理すると、優先順位を判断しやすくなります。
『デジアカ』では、事前調査に寄ってデジタル化する資料の絞り込みをサポートし、調査結果を基にデジタル化仕様、メタデータ項目、管理システム、費用などを含むご提案が可能です。
「どの資料からデジタル化すればよいか分からない」「所蔵資料の全体像を把握できていない」といった場合には、まず資料の調査から始めてみてはいかがでしょうか。
最後までお読みいただきありがとうございました。















