劣化マイクロフィルムのリスクとは? 放置したままだとどうなるの?
マイクロフィルムが劣化するとさまざまな症状や影響があらわれます。
劣化したマイクロフィルムをそのまま放置しておくとフィルムはどうなっていくのか、周囲にどのような影響を及ぼすのか...
この記事では、劣化したマイクロフィルムが及ぼす影響と、劣化が進んだフィルムがどうなってしまうかついて、実際の劣化マイクロフィルムの写真を交えてご紹介します。
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劣化マイクロフィルムが及ぼす影響について
マイクロフィルムの劣化とは、一般的にTACベースフィルムにおいて経年劣化により変形が生じたり酢酸臭などを発したりすることをいいます。
マイクロフィルムが劣化すると、次のような影響を及ぼします。
(※本記事ではTACベースフィルムにおける劣化症状についてのご紹介となります。)
【酢酸による周囲への影響】
マイクロフィルムが劣化すると、必ずといってよいほど酢酸が発生します。
この酢酸の臭い(酢酸臭)は腐ったお酢のような独特な臭いであり、フィルムを利用する人はもちろんのこと、フィルムを利用する場所や保管場所など周囲へも嫌な臭いをただよわせることになり、大変嫌がられます。
書籍などを所蔵している書庫や閲覧室などで劣化マイクロフィルムを一緒に保管している場合、酢酸臭は紙や布に吸着しやすいので、書籍などに臭いが移ってしまうことがあり注意が必要です。
また、酢酸は金属なども腐食させやすいため、エアコンなどの空調機も駄目にしてしまうことがあります。酢酸の除去に優れた効果のある空気清浄装置などを導入するなどの対策も必要です。
また、酢酸は有害物質指定640種に含まれるため、強烈な酢酸臭を発するフィルムを取り扱う場合には、ゴーグルや酢酸用ガスマスクなどを装着し、眼、鼻、口などを保護して作業にあたることをおすすめします。
【変形したフィルムが使用できない】
マイクロフィルムが劣化すると、徐々に波打ちなどの変形が起こります。
初期の劣化であれば波打ちもゆるやかなため、閲覧機などでの使用で問題はほとんど生じませんが、劣化が進むと変形も徐々にひどくなっていき、閲覧機にかけることができなくなってしまいます。
また、マイクロフィルムをデジタル化しようとする場合でも、変形したフィルムをスキャナーにかけると、フィルムの歪みの影響でピンボケ画像となってしまったり、スキャナーの故障の原因にもつながります。
基本的に、変形がひどいフィルムについては、フィルム自体の破損にもつながるため、閲覧機やスキャナーなどの機械にかけることは避けたほうがよいです。
【貴重な情報が失われる】
極度の劣化により、平面化処置などの修復や複製までもが困難となってしまうと、フィルムを使用することができなくなるためフィルム内の情報が失われることとなります。
世界にひとつしかないマイクロフィルムで、撮影された原本も世の中に存在しない場合、唯一の貴重な情報が失われてしまうことになり、取り返しのつかないことになってしまいます。
劣化マイクロフィルムをそのままにしておくとどうなる?
それでは、劣化が進んがマイクロフィルムがどのようになっていくのか、実際の写真をお見せしたいと思います。
比較的初期から中期の劣化フィルムでこのような変形によるねじれがみられます。
ハーフパイプのように湾曲したフィルムもあります。
ベース面から湧出した液状の可塑剤によってフィルムがはりついてしまっています。
液状の可塑剤が結晶化したものです。
フィルムの側面にも結晶化した可塑剤がびっしりとはりついています。
結晶化した可塑剤と、プラスチックリールの一部も溶けてしまっています。
べとべとになってしまったフィルムです。固着しているためリールを破壊してフィルム取り出します。
画像膜(画像面)が溶けてしまい多くの貴重な情報が失われてしまいました。
劣化が進むとプラスチックリールも溶かしてしまいます。
溶けてしまったプラリたちです。
劣化が進み、最悪の場合はこのように枯れ葉状に崩壊してしまいます。
まとめ
今回は、マイクロフィルムの劣化が進むことによりどのような影響がでるのか、実際の劣化マイクロフィルムの写真を交えてご紹介しました。
マイクロフィルムは一度劣化が始まると加速度的に劣化が進行します。
フィルムの臭いなどが気になりはじめたら、まずは現状を把握するために劣化調査を実施しましょう。
ニチマイではマイクロフィルムの劣化調査(一次調査は無償、二次調査は有償)を数多くのお客さまに対し行ってまいりました。
疑問点がありましたらいつでもお問い合わせください。ご相談お待ちしております。