
公的機関が出しているデジタルアーカイブの参考資料
デジタルアーカイブには、資料の選定やリストアップ、デジタル化、メタデータ作成、システムの導入など様々なプロセスがあり、どのような手順で進めたらよいか悩むこともあると思います。今回はそんな時に参考になる、公的機関から出ているデジタルアーカイブに関するガイドラインなどの参考情報をご紹介します。
国立公文書館
「公文書館等におけるデジタルアーカイブ・システムの標準仕様書」
国立公文書館は、デジタルアーカイブを効果的に運用するための指針として「公文書館等におけるデジタルアーカイブ・システムの標準仕様書」を公開しています。
デジタルアーカイブ・システムを計画・構築・運用する際の基盤となる技術情報を整理することに役立ち、特に技術仕様を明確化することで、開発者や担当者が標準的なシステムを設計・調達・評価する際の共通基準として活用することができます。
主な内容
具体的には次のような内容で構成されています。
〇目録データ・デジタルコンテンツの準備
・公文書目録データの記述方式、電子符号化方式の標準化
・メタデータ記述については国際的な記述原則(例:ISAD(G))に基づくことを想定
・検索・連携を容易にするための最小限の目録項目(例:ID、年代、資料名等)を定義
〇文字コードと外字
・Unicode系(UTF-8/UTF-16)を推奨
・外字の扱いについても規定あり
〇デジタルコンテンツ形式
・保存用の画像はTIFF(非圧縮)、公開用はJPEG/PDFなどをサポートすること等が示されています。
システムの構成例
仕様書では、実際のシステムの構成例として、次の3段階を示し、それぞれの機能要件や構成事項を整理しています。
- 基本的な構成
- 標準的な構成
- 発展的な構成
各構成ごとに、目録データや検索機能、公開機能、管理・保存機能などについて記述事項例が示されています。
また、平成30年改訂版では、以下のような最新の実務的要件への対応が追記されています。
- 選べるシステム構成
– 単独運用だけでなく、クラウドや共同運用の考え方も示し、各館のニーズに合わせた柔軟な構築を支援。 - 安全性・セキュリティ対策
– インターネット接続環境でも安全に運用できるよう、ウイルス対策、外部攻撃対策、バックアップや性能管理等の具体的な方法を紹介。
使いやすさと利活用促進
– 利便性向上のために、複数の検索支援機能(ファセット検索等)、コンテンツ表示機能、ユーザーインターフェースの設計に関する考え方を盛り込んでいます。
– 目録データの外部提供インターフェースやリンク切れ防止、ライセンス表示など、データ活用面の配慮も強化しています。
国立国会図書館
「国立国会図書館資料デジタル化の手引」
国立国会図書館が公開している 「国立国会図書館資料デジタル化の手引」(以下「手引」)は、同館が所蔵資料をデジタル化する際の 仕様の共通化・技術共有・品質管理・作業効率化を目的としたガイドラインです。実務担当者向けの標準仕様書として作成されており、主に画像としてのデジタル化を対象としています。
主な目的
この手引きの目的としては、主に次のようなことが記載されています。
- 所蔵資料をデジタル化する際の 仕様を共通化 して、品質を確保すると同時に作業効率を高める。
- 技術の共有によって、国立国会図書館内だけでなく、他機関でも参照できる標準的な指針にする。
- 実務担当者が データ仕様、作業環境、工程管理、品質検査などを体系的に理解・運用できるようにする。
主な内容
主に次のような内容が示されています。
■ デジタル化の技術と考え方
- 解像度、圧縮率、カラースペース、階調など デジタル画像の仕様 に関する基礎と実務的な説明。
- 表示や長期的利用を考慮した ファイル形式・色管理の基準 など。
■ デジタル化作業の手順
- 作業環境・原資料の取り扱い、作業場所や事前調査といった実務上の留意点。
- スキャニング作業、原資料保護のための注意事項など。
■ 品質管理と検査
- 画像データの 品質チェック方法(欠損・重複・ファイル整合性など)と評価手法。
- 使用ツールや検査のポイントについての具体例。
■ プロジェクト管理
- デジタル化作業全体の 進捗管理、委託先とのやり取り、品質保証体制の確立などの管理面の指針。
■ 付録・参考資料
- サンプル仕様書例(貴重資料用など)、
- 著作権処理に関する手続きや考え方(他館との合意事項の反映など)。
技術の進展などを背景に2017年度に一度改訂されており、基本的な内容がさらに充実し、デジタル化作業の効率化や品質管理の知見に関する内容も追加されています。
文化庁
「著作権テキスト」
文化庁の「著作権テキスト」は、文化庁著作権課が毎年度更新して公開している著作権の基礎から制度・運用までをわかりやすく解説した教材(PDFなど) です。近年は 令和6年度版(2024年度版) が公開されています。
デジタルアーカイブの構築・公開には著作権処理が不可欠で、資料の「複製」やインターネットでの公開には、原則として著作権者の許諾が必要です。許諾や処理などきちんとした手続きを踏まないと権利の侵害となる恐れがあります。
主な目的や位置づけ
このテキストは、著作権制度について初心者でも理解しやすく整理された入門教材で、著作権の基本的な考え方から、具体的な制度・条文解釈、日常的な創作・利用の場面までを条文と解説・図表・事例を使って解説しています。教育・講習会等の著作権啓発教材としても位置づけられており、学校教育・非営利目的での利用も可能とされています。
主な構成や内容
「著作権テキスト」では主に次のような項目・テーマ について解説がされています。
■ 著作権制度の基礎
- 著作権制度の仕組みと目的
- 知的財産権の位置づけと著作権の役割
- 著作物とは何か(創作性・思想・表現の違い)
- 著作者とは誰か(創作者の定義)
- 著作権の発生・保護期間・対象範囲の基本
この章は冒頭で制度の全体像から丁寧に説明されています
■ 著作者の権利と保護内容
- 著作者人格権と著作権(財産権)の区別
- 利用形態ごとの権利(複製・公衆送信・展示・翻案など)
- 著作隣接権(実演家・レコード製作者等の権利)
制度上の権利内容の理解を深める解説が続きます。
■ 制限規定と著作物利用
- 許諾なしに利用できる場合(私的複製、教育目的利用、図書館利用等)
- 一部例外的利用と注意点
- 法改正項目の解説(最新の制度変更が反映されている年度版あり)
制度の例外や実務的な扱いについても網羅的に説明しています。
■ 利用事例・相談・制度施策
- 日常の創作・利用に関する具体例
- 相談窓口・関連制度の案内
- 条文の読み下し解説
法律条文をそのまま読むだけでなく、実務面での理解を助ける解説が添えられています。
このテキストは条文をベースにわかりやすく説明されています。実務にも応用しやすいように、事例や図表などが適材適所で活用されています。非営利・学校教育などでの利用が認められており、テキストを教材として役立ちますので、ぜひ活用してみてください。
デジタルアーカイブジャパン推進委員会実務者検討委員会
『「デジタルアーカイブ活動」のためのガイドライン』
このガイドラインは、従来の「デジタルアーカイブの構築・共有・活用ガイドライン(平成29年)」の後継として、より広い「デジタルアーカイブ活動」そのものを対象にしており、専門機関だけでなく、これから活動を始めようとする組織や個人、利活用者までを視野に入れた内容になっています。
改訂の経過とその背景
従来のガイドラインが「システム構築や連携のための指針」だったのに対し、令和6年度版のこの新しいガイドラインは、活動そのもののデザインや在り方に踏み込んでいるのが特徴です。デジタル化の企画、相互連携、AI活用、持続可能な運用のための設計と自己診断(アセスメントツール)を包括的に示しています。
ガイドラインが改訂された背景には、デジタル技術の急速な進歩や、ジャパンサーチなどの連携機関の増加などがあります。また先に示したような著作権法改正など制度環境の変化もあります。
全体の構成
ガイドラインは大きく2章構成になっています。
第Ⅰ章 「デジタルアーカイブ活動をデザインする」
- 活動の意義や目的
- 活動を企画・設計する際の考え方・ポイント
- 利用者・ステークホルダーの視点
- 社会・文化的価値を生むための戦略的方向性
この章では、どのような活動にすべきかを設計する思考枠組みを提示しています。
第Ⅱ章 「デジタルアーカイブ活動を自己診断する」
- 実際に活動を進める際に活用できる指標
- 「デジタルアーカイブアセスメントツール(ver.3.0)」との連動ガイド
- 活動状況の把握・改善に向けたチェック方法
この章は、活動の現状評価・改善につながる実践的なツール指向の章であり、ツールと併せて活用すること示しています。
まとめ
この記事では、公的機関が提供しているデジタルアーカイブに関するガイドラインや参考資料を紹介しました。これらの資料を参考にすることで、デジタルアーカイブを効率的に進めることができ、価値ある情報を提供できるようになることと思います。ぜひ、紹介したガイドラインを活用し、組織のプロジェクトでお役立てください。
↓こちらの事例もぜひご覧ください!
最後までお読みいただきありがとうございました。










